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出どころ知れない異世界より  作者: 耳朶楽
第三章
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番号

ティアリスが独り旅を始めた直後、運良く遭遇したテスィシート行きの馬車に乗せてもらい、運悪く奴隷として捕まってしまった翌日。テスィシートに到着した馬車は正規の手順ではない入り口から検問を通さず入場した。

ティアリスは両手両足に崩魔鉄(ほうまてつ)製の手錠と足枷を二つずつ嵌められ、口には猿轡、視界は黒い布で隠されて身動きが取れない状況になっていた。


「全くこの小僧、エルフ用の手錠を二つも使わないと魔力を抑えられないだなんて。墨霧さん、アナタがいなかったらどうしようかと思いました」


若干女性っぽい口振りのワラゥルはそう話す。返事は無い。

ティアリスはその言葉を憤怒の心で聞くことしか出来なかった。


「それじゃあアナタ達、その小僧を牢に放り込んでおきなさい」


「「うっす」」


厳つい男の声が二つティアリスの耳に入った。スタスタと遠ざかる足音に待てと一声上げたいがそれも叶わず。ティアリスはゲモンに小脇に抱えられてさらに暗くなる視界の中何処かへ連れられた。


「(クソがっ!魔力さえ使えればこんな連中...畜生!あの黒いヤツのせいだ)」


あの夜、彼を闇に紛れて後ろから麻酔薬で眠らされたあの夜の事を思い返して歯噛みしていた。


ギィ...と軋む金属音を聞いたティアリスを突如浮遊感が襲った。


「んぐっ!?」


ドスンと顔から冷たい地面に落とされ、思わずうめき声を上げた。


「そこで大人しくしてろ」


「おい、そこのメスガキ、そいつの目隠しと猿轡を取っておけ」


「は、はいぃ!」


ガチャリと鉄格子が閉められ、ゲモン達は去っていった。

首の後ろ辺りからゴソゴソと触られる感触があり、はらりとティアリスの視界が晴れた。


「大丈夫...?」


晴れた視界に最初に映ったものは少女であった。やつれた表情をしたボサボサ髪の少女。


「なんとか...」


「良かったぁ」


ふわりと微笑む少女の笑顔はティアリスにとってとても眩しいものに見えた。


「取ってくれたありがとう。あんたは?」


「わたしはマミ...あ、違った。57番」


「57番?」


「うん、ここ見て、数字が書いてあるでしょ?これがわたし達の名前なの」


背中まで伸びる不揃いな髪を払い、右肩を見せるとそこには焼印で57という数字があった。


「それは?」


「言った通りわたし達の名前。キミも後で入れられると思う。すごい痛くて熱いけど、大声出すと殴られちゃうから我慢したほうがいいよ?」


「えっと57番?」


「なに?」


「あぁ、これでいいんだ。えっとあんたはいつからここに?」


「多分...1ヶ月くらい前かな」


小首を傾げる57番という少女。ティアリスはおかしな呼び方に違和感を持ちつついくつかの疑問をぶつけた。


「ここは何処なんだ?」


「うーん、わかんない。テスィシートのどっかって聞いたことがあるけどどこかはわかんない」


「そうか、じゃあここがどういう所かわかるか?」


「奴隷にされたわたし達が売られちゃうところだよ。時々お金持ちっぽい人が来てわたし達を選ぶの」


「奴隷商か...57番...その、番号で呼び合わないといけないのか?」


「うん、よくわかんないけど本名を教えちゃダメだし、呼んでも呼ばれてもダメなんだって」


「(情報の秘匿か?)」


ティアリスが一人その事について悩んでいると57番が声を掛けた。


「ねぇねぇ、お名前教えて?」


「今本名教えちゃダメだって言ってたじゃないか」


「だってキミは今、番号(おなまえ)無いでしょ?いつまでもキミって呼ぶのはイヤだよ」


「そんなで良いのか...はぁ、俺はティアリス。姓は無い」


「ティアリス君?女の子見たいなお名前だね」


「よく言われる」


「今何歳?」


「多分今年で七歳」


「あー、わたしと同じだ!わたしも七歳なの」


えへへーと笑みをこぼす57番にティアリスは怪訝そうな表情を向けた。


「ずいぶん嬉しそうだな、親元から引き離されて見知らぬ地で奴隷だぞ?不安じゃないのか?怖くないのか?」


「うーん、怖いし寂しいよ?でも今はティアリス君がいるし。一ヶ月間ずぅっと独りで寂しかったんだ」


「そ、そうか」


もしかしたらこの子は大物かもしれないと予感したティアリスであった。


「オラ、さっきのクソガキ。出ろ」


「呼ばれたよ」


ゴツイ男の言葉に57番が反応すると。


「あん?何勝手に喋ってんだメスガキがぁ!」


「いぎぃ!?」


男は激怒し57番の脇腹にローキックを入れた。


「いっつもいっつもヘラヘラヘラヘラ、気持ちわりぃんだよメスガキがぁ!!」


「いたっ、痛い!ご、ごめんなさい!ごめんなさいぃ!」


ガスガスと蹴りを入れる男に泣きながら57番は謝った。そんな光景を見たティアリスは駆け出し2人の間に入った。


「待て!今は俺だろ!?その子に手ぇ出すんじゃねぇ!!」


「あぁん?言葉遣いがなってねぇなぁ?年上には敬語だろうっがぁ!!」


ドスっと鈍い音を立ててティアリスの土手っ腹に男のヤクザキックが入った。


「ぐふぅ!?」


「女相手に一端の騎士気取りかぁ?あぁん!?」


「ごほぁ!」


「お、おい止めろ!大事な商品だぞ!!」


「あ?チッ、クソが、今回は初めてだからコレで許してやる」


騒ぎを聞きつけた看守が男を止めた。


「いつまで寝っ転がってんだクソガキ、さっさと来い!」


男は痛みで蹲るティアリスの髪を掴み、牢から引きずり出した。


十分後。ティアリスはまたも男に引っ張られて牢屋へ投げられた。


「いっつ...」


「だ、大丈夫?」


「クソガキ、今日からてめぇの名前は『72番』だ!ペッ」


倒れるティアリスに唾を吐きかけた男はそのまま去っていった。


「ぐぅ、クソが。しこたま殴りやがって...」


「ごめんなさい。さっきわたしが余計なこと言っちゃったから...」


「大丈夫だ。別に気にしてない。っつぅ〜!」


「い、痛いよね、そうだよね。ごめんね」


そこから十数分に渡ってティアリス改めて72番は57番に謝り倒された。


「うぅ〜ごめんねぇ〜」


「わかった、わかったから。もういいから」


「ホント?」


「ホントだ」


「うん...わかった」


いつの間にか泣いてた57番は目尻を手で拭い、72番を見つめた。


「ど、どうした?」


「ううん、なんでもない。ただちょっとだけ嬉しいなぁーって」


「嬉しい?」


「こうやって頭を撫でてくれる人が居て嬉しいの」


72番は気付いたら57番の頭を撫でていた。無意識に落ち着かせようとしていたのだ。

そしてその言葉に72番は軽く安堵した「嬉しい」と言う言葉で7歳のいたいけな少女が蹴られて喜ぶ危うい性癖を持ってしまったのかと勘違いしてしまうところだった。


「57番は蹴られたところ大丈夫か?」


安堵ついでに聞いてみた。奴隷であろうと女の子の身体に傷があっては可哀想だと言う配慮でもある。


「うん!ジンジンしてるけど大丈夫。このくらい気持ちいいくらいだよ!」


既に手遅れであった。


奴隷商の方からなんの接触も無いため72番は57番に訊ねた。


「なぁ、俺らはここで何かするのか?」


「ううん?何もしないよ、ずっと牢屋に入れられっぱなし」


「ふうん」


そんな何気ない会話をしていると...。


「ふわぁ〜あ、さっきからうるっせぇなぁ〜?」


若い男の声が牢屋に響いた。


「あ、19番さん起きたんだ」


「19番?」


「うん、お向かいさんだよ」


「ん?オメェ新入りか、ってぇ!オメェ!!57番ちゃんの牢屋にぃ!?」


19番と呼ばれた男は真向かいの牢屋の住人である。赤い髪の毛を激しく揺らし、鉄格子を引きちぎらんとばかりに握り締め、72番に血の涙を流しそうな目で睨みつけた。


「19番さん、この子は72番君。わたしのルームメイトさんです」


ふふんと胸を張って19番にドヤ顔をかますが聞こえていない様子だ。その目は血走り72番を睨む。


「クッソ!なんで男が57番ちゃんの牢屋にぃ!!オメェ!名を名乗れぇってぐぎゃぁ!?」


騒ぐ19番の額に拳大の石が飛んだ。ジャストミートである。


「うるっせぇぞ19番!今何時だと思ってんだ!」


「21番さんも起きてたんですね!」


「おぉ、嬢ちゃん、起きてたのか、早く寝ろよ?もう深夜だ」


21番と呼ばれた渋い声は隣から聞こえた。


「72番君、21番さんはお隣さんだよ、挨拶しておいてね」


「あ、あぁ。新入りの72番だ。牢屋は57番と同じ。よろしく頼む」


「おぅ、よろしく。21番だ。ここでは割と古参のナイスガイだ何か分からねぇことがあったら聞いてくれ」


21番の姿は見えないがかなり歳のいっているように思えた。


「じゃあ早速。向かいのアレは?」


「アレは19番。俺よりも古参の見ての通り変態だ」


「21番、オメェいてぇじゃねぇか!こんなもん投げつけんじゃねぇよ!」


「こんなもんとは失礼な、それは俺が掘り当てた貴重な武器だぞ?」


「何が武器だ!ただの石ころだろうが、あーふらふらする。寝起きのせいか意識が...」


「そのまま寝ちまえ」


「そうは行くか、57番ちゃんの牢屋にどこの馬の骨かも分からん野郎がいて眠れるか!」


「お前は嬢ちゃんのなんなんだ」


「お兄ちゃんだ!!」


自信満々にそう言い張る19番。72番は57番に確認を取った。


「兄貴なのか?」


「ううん、違うよ?」


「だってよ」


「ぬぅおおおおおおおおお!!!」


騒がしい男だ。それが72番の19番に対する評価であった。

72番は21番にもう一つ疑問を訊ねた。


「21番はさっき深夜だと言ってたけどなんでわかるんだ?」


「あぁそれか。俺の体内時計はすこぶる正確でな、昼だと思えば上の奴らから飯が運ばれてくるし、夜だと思えば看守が明かりを消すってだけだ。時間が知りたかったら聞いてくれ」


なんとも便利な機能である。72番は21番を便利なオッサンと認識した。

3章以降はまた不定期になります。


それとツイッターついさっき始めました(2016/02/23 10:36:00)


@jidaraku46naro

https://twitter.com/jidaraku46naro?s=09

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