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出どころ知れない異世界より  作者: 耳朶楽
プロローグ
3/39

赤ん坊

初回サービス連投キャンペーン最終弾です。

せっかくの最後ですのに前二つと比べて短い出来となってますが今後文字数増やしていこうと思います。

「―――ッ!――!?」


「―ッ―ッ!」


男女の言い争う声で彼はゆっくりと目を覚ました。

意識がハッキリとしていない。脳が起動してくれるまで彼は言い争いを聞き流していた。何を喋っているのかは理解出来ていない、彼の知らない言語だ。仕事上、必要だと考え日英中独のフォースリンガルであった彼が理解出来ない言語だった。単にボケてるだけかもしれないが。


「(あ〜、意識が戻ってきた...。うん、俺の名前は若白樺 有名、ナイスガイだ)」


自身を確認し、心の中でよしっと呟いた。


「(確か俺は、死んで...死神が...骸骨で、舟から落ちて...)」


ゆっくり記憶を辿って現在まで追いつく。


「(落ちて...落ちて...あれ?ここどこ?)」


有名は周りを見回そうとするが身体がうまいこと動かない。動けない。動かせない。


「(なんだこりゃ?)」


身体が動かないのもおかしいが、視界が非常に曖昧なのもおかしい。ボヤけていると言うか、ゆがんでいると言うか。


「(とりあえずさっきから騒がしいこの声の主に聞いてみるとするか)」


疑問は尽きないが情報が何も無いのでは話にならないと考え、口を開いた。


「あうぉー(あのー)」


声は出た。確かに出た。しかし聞き覚えのない高い声、まるで子供のような・・・と言うよりも赤ん坊のような...


「え?うよ?(え?うそ?)」


何やら非常に重く感じる腕を持ち上げ自分の顔をペタペタと触る。

柔らかい、暖かい、すべすべの...


「あやんおぅやっえぶぅぅううううう!?!?(赤ん坊になってるぅぅぅううううう!?!?)」


流石に驚いた。“若白樺(わかしらかば) 有名(ありな)”は“赤ん坊”になってしまった。


「「!」」


赤ん坊の声を聞いた2人の言い争いは止まった。女の方が「あらあら」とでも言うかのように赤ん坊の元へ駆け寄った。


「(うぉ!?)」


声にこそ出さなかったが未だ自分の身に異常なことが起きていることに驚愕を隠せない赤ん坊は、突如視界を埋めた黒い影に驚いた。


「(―――♪―!―――♪―っ!)」


女は赤ん坊を猫なで声でいないいないばーをしてあやすも、見た目こそ赤ん坊だが中身は立派な成人の赤ん坊には、未発達の視界が輪をかけて恐怖と疑問しか生み出さなかった。


「(なに!?なんなのこの人!?人?そもそも人なのこの人!?怖い!)」


ぼやけた視界に人型ではあるものの顔をパカパカと開閉する黒いシルエットは化け物のようにしか見えなかった。しかも耳に入る声は理解出来ず、歪で甲高い鳴き声にしか聞こえなかった。

女は女で自分が赤ん坊に怖がられていることにガックリと肩を落とした。


「――、―――っ!」


今度は男の方が不機嫌そうに女を押しのけ赤ん坊に近づいて行った。


「(なんっ、なんですの!?俺が何したっていうの!?!?)」


男は赤ん坊に手を伸ばした。これを赤ん坊から見ると黒い影が視界をゆっくりと埋め尽くしている様である。

心底ビビってる赤ん坊を見かねた女は男の手を制し怒鳴り声をあげた。


「―――!!――っ!!」


それに対して男も大声を出す。


「―――っ!?――!!―、―、――っ!!」


2人は怒りに耐えかねほぼ同時に組み付いた。

赤ん坊の目からみたこのやりとりはさながら怪獣大戦争である。自分よりも数倍大きな生き物が怒鳴りあげて組み合う。それはもう恐怖以外の何ものでもなかった。


「(怖い!!恐い!!コワいぃぃぃいいいい!!!!)」


実は元来生粋のビビりであった赤ん坊は今にも失禁して失神しそうである。

ちなみに前世では仕事と割り切って集中していたため化け物にいちいち驚きはしていなかった。


「―――!!」


「―――っ!」


怪獣大戦争は男が女を腕力に任せて押し倒し終了した。

邪魔者を排除した男は赤ん坊に近づき頭を鷲掴みにした。


「いや、いやい!(痛っ、痛い!)」


もう赤ん坊の恐怖ゲージは針が吹っ切れて失禁してしまっている。そんな赤ん坊に男は顔を近づけ叫んだ。


「―――っ!!!!」


そしてそのまま大きく振りかぶり...


「―――!!」


投げた。


「いぎゃああああああああああ!?!?(いぎゃああああああああああ!?!?)」


赤ん坊は強い衝撃と音、強風を全身で浴びながら窓のガラスを突き破り外へ飛んで行った。


「(ウソだろ!?投げたぞ!?アイツ!?)」


だんだんと高度を落とし、赤ん坊の顔面は地面へと近づく。衝突したら無事では済まない。


そんなとき甲高い女の声が短く響いた。


「――っ!」


すると強烈な風が巻き起こり、赤ん坊は速度を急激に緩め空中で静止した。


「(た、助かった?)」


女は赤ん坊のもとへ駆け寄り慈しむようにゆっくりと抱き上げた。


「(は、た、助かったぁぁぁぁぁぁぁ...)」


赤ん坊は抱き上げられ人の温もりを感じ取り深く深く安堵し、女の腕の中で気絶した。

次回から第一章です。


誤字脱字、気になる点やご意見ご感想頂ければ幸いです。

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