剣を向けられました。
「それで、兄様。この魔具、新しいやつですよね? どうして今……」
「ああ、気づいてたか? さすがだな」
「気づいてたかって……兄様も私が気づいてたこと分かってたでしょう?」
「まぁ、でもすぐに気づいたことには感心してた」
「むぅ」
「むくれるな、可愛いだけだ」
「むぅぅぅ」
「ははっ」
私と兄様がじゃれているのをルリが不思議そうな顔で見てきた。
「気づいてたって……何をでしょうか、フェリクス様」
「あれ? ルリ、わからなかった?」
「そう言うな、ティー。普通はわからない。ルリア、今私は魔具を使っていたんだ」
「魔具、ですか?」
「それも王宮魔術師が作った最新魔具、会話が聞こえないようにする効果がある」
「会話が…あっ!」
「ルリ…遅いよ」
呆れた目で見たら、ルリがむすっと顔をしてきた。
「クリス様たちとは違います! クリス様が素であったことに気付かなかったのは私ですが…」
ルリが言ってきたので笑いで返事をしといた。
さて、ここで色々あるわけですが。
私は、家族や気を許した人以外の前では演技を徹底している。
例えば、呼び方。
兄様のことは、外では『お兄様』、普段は『フェリ兄様』『兄様』と呼んでいる。
ルリに関しても外では『ルリア』である。
そして、言っておきたいこのことを。
私の存在は世間一般では『幸薄姫』として認識されている。
その場にいても、兄様や他の兄弟の影に隠れて目立たない。
そこまで美人じゃないし、才能も飛びぬけているわけでもない。
その場にいても
「え、嘘、レオタール家の次女がいた? 全然気づかなかった!」
と言われるほど、存在感もない。
それでいて、他の兄弟の権限や権利、威光を傘にきて好き勝手するレオタール家の汚点とか言われている。
もうぅぅぅ最高っ!
最高でしょ!?
『幸薄姫』!
なんて素敵な響きっ!
聞いたときは、飛び上がって喜んだ。
家族の悪い噂は嫌だけど、私に関しては全然問題ない。
バッチコイ!
そのイメージに合うように、というか、そう勘違いされるように頑張ってきたんだから、嬉しくて嬉しくて!
私は凄くこの渾名に満足している。
そして気に入っている。
「というわけで、ルリ、早く行こう。ジュリ姉様に会いたい」
「どういう訳ですか」
「まあ、姉上も待っているだろうからな、行こうか」
◇◆◆◆◇
「…! フェリクス様、ジュリアーヌ様にお会いに?」
「ああ、そうだ。姉上と会う約束をしていたのだが」
「それが……今、ジュリアーヌ様はお客人とお会いになられていまして……」
「誰だ?」
兄様が訝しげな顔をしている。
といことは、姉様とは私と会うために約束していたってことなのに、それなのに姉様が他の人と会うって……ないな。
ジュリ姉様って、何故か、私のこと大好きだからなー…
騎士の二人はどちらも武人っっていう感じの人だった。
一人はきりっとした眉が目につくガタイのいい人。
もう一人は、鼻筋が通っている人。
どちらも様相としては整っている。背も高い。
「アンソラ子爵様で……」
「そこをどけてくれ。私と姉上は会う約束をしていた」
「で、ですが」
「問題ない。むしろ、姉上は喜んで私達を迎え入れるだろう」
と言いながら、さっさと兄様は中に入って行きました。
強引ですね、兄様ったら。
ところで、私達は一体どうすればいいのだろうか。
「そこのメイド……ん?」
騎士の一人がこちらを向いた。
「お前は……誰だ」
「………」
無言で剣を抜かれ、威嚇されました。
さっきから話していたのは、眉が目につく人のほう。
………というか、殺気を向けられた私は一体どうすればいいのでしょうか。
こういう時は、目立つほどの美人だったらいいなって思います。
後で色々修正するのではないかと。
というか、なんですか、これ。
え、日別ランキング、二位!?
しかもお気に入り登録、ものすごく増えてて……
幸せすぎて、怖いっ!!




