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王宮へ向かいます

こんにちは、みんなのお嬢様、クリスティーヌです。


お買いものしてから一週間がたち、やってきました、王都に行く日。


 先のばしてもしょうがない、と思いつつ、先延ばしにしたいという想いは日に日に強くなってきました。

あああああ、私の馬鹿! どうして一か月後とか一年とかにしないで良識ある一週間にしちゃったんだ!


ここら辺が日本人感覚が抜けてないところだよね……


「うぅ~…! ルリ、やっぱりやめない? 王都に行くの!」


「もう手紙は出しましたので」


「クリスティーヌお嬢様、お覚悟を決めなされ」


「お嬢様、向こうで婚約者を見つけてくるのですョ!」


 ルリの返答にへこみ、執事長オーレリーとメイド長ゼナイドからの言葉に追い打ちをかけられた。


「く…っ! 執事長もメイド長も五月蠅い! 特にゼナ! 私は婚約者を見つけに王都にいくんじゃないの! お父様にこれからどうすればいいか聞きに行くんだから! というかそもそも私は王都に行ってそのまま帰ってこないという気はないんだからねっ! すぐに帰ってこれるように頑張って交渉してくるんだから!」


 むしろ私はその名の通りに、独身貴族のまま、この屋敷のベットで、老衰によって死ぬのが人生の目標である。そして今のまま行けば、私は間違いなくそれが出来る。


「クリスティーヌお嬢様、お体にお気をつけて気をしっかり持つのですぞ」


「お嬢様、旦那様によろしくお伝えてョ!」


「はーい」


「クリスお嬢様、外では侯爵令嬢らしくなさってくださいませ」


「それ、誰に言ってるの?」


軽口を叩きつつ、私とルリは有りえない程少ない荷物で”お父様の執務室”に入った。


これから、お父様の転移装置で、王都にあるお父様の執務室に飛ぶのだ。

 普段は、お父様が王宮への通勤のためにしか使われない転移装置なのだが、一応、現陛下の訳のわからない命令?のため、私たちが使ってもよいことになったのだ。


魔具の前に立った私は一つ、ため息を吐いた。


「ルリ、嫌な予感する?」


「―――いいえ、まだ」


一泊置いて答えたルリの返答に私は先ほどとは違い、ほっと溜息を吐いた。


「なら、行ったすぐ目の前でお母様を押し倒しているお父様とか、熱い口付を交わしているお父様達とか、いっそ挿入しちゃってるお父様とか、そういう可能性はないってことだよね、よし! それだけでも気が楽になったっ!」


「お役にたててなによりです」


 過去の事例を様々思い返しながら、とりあえず、この後ろには何もない、ということを思い―――転移装置の魔具の中へ足を踏み入れた。



「王宮へ!」



 ぐるん、と景色が一回転し、コーヒーカップで揺られたような気持ち悪さがやんで、少しだけ吐き気がしたが、乗り物酔いだと思いつつ、瞑っていた瞳を開く。

質素だが間違いなく家具は一流の部屋。お父様好み、ではない。


そして―――


「わが愛しの妹よ、逃げ出さずに、無事に到着したようだね」


にっこりと、どんな女性も頬を染めて見惚れるだろう美しい笑みを浮かべた―――フェリ兄様が目の前に立っていたのだった。


お兄様でたよっ!やったねっ!

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