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あまりいい予感がしません。

続いたよっ!

「ふう…」


春の日差しが私の頬をなぞる。温かい。

思わず眠り落ちそうな空気の中で、昨日、新しく買った本をぱたん、と閉じた。

面白くて一気に読み進めてしまった。


続編あるのかなあ。


などと思いながら私は探しに町にでも行こうかと腰を上げた。


トントン


「お嬢様」


形ばかりのノックの後私が答えるより先に扉が開いて現れたのは涼やかな美人、ルリアである。


「あれ、なあに? ルリ」


ストレートショートの銀髪に蒼い瞳は夜の月を思わせる。私はルリの静かなソプラノが好きだった。

今から呼びに行こうと思っていたのだが……どうしたのだろうか。


不思議に思って聞いてみたら少し微妙な顔をしてルリは答えてくれた。


「サマエル様からの使者がいらしているようです」


「はぃ?」


サマエル・レオタール

私の実の父、お父様である。

お母様至上主義者で、激甘愛妻家として世界中に知れ渡っている。

ある時、ある案件をお父様は当時の陛下から承った。半年かかるだろうと言われていたそれを彼はあろうことか二カ月で終わらせるという奇跡を起こした。この案件、長年微妙な距離をとっていた国との同盟協定を結ぶ、的なものでお父様は当然交渉のためにその国へ滞在しなければならなかった。

聞いたのは誰だったのか。


〈は?お前は馬鹿か。私がクレア(←お母様の名前)と半年離れるとか死ぬ〉


と言ったという噂は真実だろう。

まあ、ここまでならサマエル侯爵が激甘愛妻家というのは世界中とまではいかなかったと……思う。自信はないけど。あ、この時点で国中には知れ渡った。

その後。世界中にそのことが知れ渡ったのは、同盟協定を結んだ国にクレアと離れさせた慰謝料と称して貿易協定やその他もろもろまでなし崩し的に結んだからだ。


あ、お父様は超美形である。淡い栗色の髪に甘いマスク。身長は高く、剣はどうかしたら騎士団長も超えるほどの腕前で、女の人にも優しい。そして一途。結婚しているのにかかわらず、女性陣から根強い人気がある。歳をとるにつれ、渋みもプラスされて大人の色気が漂っているのにもかかわらず、四十代後半にさしかかろうかと言うのに見た目は三十前半と言ってもいい若々しさなのはある意味化け物だと前世の記憶を持っていると思ってしまう。


……。

ここまで一生懸命長々とお父様の説明をしてきた訳だけど。

まぁ、とにかく、何が言いたいかというとね?


……お父様って私と連絡することって皆無なんだよね。


愛してはもらっている。

けど、お父様の視線はいつだってお母様に注がれていて、なんていうか、私達子供に視線をむける時間が惜しいというか。子供に目をむける暇があるならお母様を愛でていたいというか。

溺愛。

と言うしかない。

そもそも毎日家に帰って来るから用があるなら言葉ですむし。

とにかく、お父様からの使者なんてこの世界に生まれおちてから初めてじゃ、ないかなあ。


あんまりいい知らせな気がしない。



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