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お話の前に休憩です



「さて、ティー、父上からどの程度まで聞いたのかな」


紅茶を優雅な仕草で飲みながら、兄様が私に告げる。

ルリに席を勧めていた私は、それに少し遅れて反応した。


「どの程度、ですか?」


「あら、そうだったわ。ティーは何処まで聞いているのかしら」


素に戻った姉様に私は首を傾げた。何処までも何も、一週間前に「一カ月以内に来い」という手紙がきたから来ただけだ。早々に帰ろうと計画しているため、早くお父様とは会いたいとは思っているが、別段何を聞いたという訳ではない。


因みに、ここに来る前にリリアさんから受け取った服は、侯爵令嬢の普段着数枚と夜会用ドレス一着、寝間着数枚だ。

一週間でそれだけ用意できたリリアさんは凄いと思う。


「お父様から聞いたのは、一か月後までに来い、と、陛下が家族を王宮に住まわせると命令した、くらいです」


「……そうか」


「……どうせ、お母様との逢瀬に忙しくて手紙を書く時間もティーに会う時間も惜しんだに違いないわ」


呆れた風の兄様は、はぁ、と一つため息をつき、姉様は、むすっと眉を寄せた。


二人の様子に私とルリは首を傾げながらも、今後の予定を伝えた。


「兄様も姉様もどうしたのですか? あ、私いつお父様に会えるでしょうか。出来るだけ早くに帰れるように許可を貰いたくて」


お父様から陛下に、私だけでも先に帰らせて貰えるように頼もう、と思っているのだ。姉様は、綺麗で有名だから抜けられないだろうけど、私なら居ても居なくても問題ない。

そう、思っていたのに……


「……それは、無理だ。ティー。帰ることは出来ない」


「へ」


無理ってことはないでしょう、いくら陛下だからって、こちらにはこちらの生活があるわけだし、家族全員呼んだら誰が領地の問題を片づけるんですか。


私の気持ちを読んだのか、姉様が面倒そうな顔をして続ける。


「それがね、ティー。お父様ったら陛下や重臣達に言ってしまったんですって。『私達の家の執事やメイド達は優秀なので、五年ほど領地を空けても問題なく、運営できる』って。まぁ、そもそもお父様は転移装置が、一部規制はあるとはいえ自由に使えるのよ? 私たちがこの王都にいても問題ないのよね」


姉様の言葉に、確かに……って思ったらだめだよ、私っ!

そこで納得しちゃったら、本当に帰れなくなるっ!


「え、え、でもでも、わ、私はいらないでしょ? だって『幸薄姫』って言って、レオタール家の汚点って言われてる私ですよ? 陛下も別にいてもいなくてもいいって思ってると………」


「ティー、諦めようか、な?」


「ティー、私よりティーの方が陛下に相応しい年齢なのよ? 噂が悪いって言っても身分でいっても悪くない訳だし、ティーが返されるってことは無いと思うのよね」


姉様!?

頬づえをつきながら話す姉様に驚愕して、目を見開いた。

姉様、ここに残るの賛成なのですか?!


「ね、姉様は……私がここに残るの、賛成なのですか……?」


恐る恐る聞くと、複雑そうな顔をされた。


「そうね、賛成って言えば賛成なのよね。でも反対って言えば反対なのよね…」


「?」


姉様が口を濁す。

兄様がポットから紅茶を継ぎ足して、私にも入れてくれた。


「姉上は、ティーの気持も自分の立場も分かってるってことだよ」


「どういう、事ですか?」


「要するに、ティーが家に帰りたいのはよく分かるし、それに対しては賛成。だけど、ティーをこのまま帰したら、本当にかなりの間、ティーには会えなくなるだろう? 勝手に父上の転移装置を使う訳にはいかないからね。姉上はそうそうここを離れる訳にもいかない立場だし。だから、姉上はティーがここに残ってくれればいいなって思ってるんだよ」


「フェリ!」


声をあげる姉様に、それが図星なのだと知った。

それと同時にこみ上げるのは、憧れの姉様が私と離れたくないって思ってることに対する幸せだっていう感情。

私の顔はキラキラと輝いて、笑顔が零れる。


「そういう事なら、暫く王宮に残ります。私も姉様とお話出来ないのは嫌ですから。いいかな、ルリ」


「クリスティーヌ様のお心のままに」


結局、私の隣に座らなかったルリを振り仰いで見ると、にっこり微笑まれて言ってくれた。

なら、これからどうしようか、と思う。

私は、うるうると瞳を潤ませている姉様の横の兄様に話を振る。


「フェリ兄様、私は何処に住むのでしょうか」


「………それも知らないのか」


何故だか愕然とした顔をされました。

え、あれ?

可笑しいこと言った?

私、お父様からジュリ姉様とキャロは後宮に住むって……後宮!?


あれ、よく考えたらそれって、ジュリ姉様もキャロも陛下のお嫁さんってことなんじゃ…!?


「ジュリ姉様、結婚しちゃったの!? ダメダメダメっ! どうして兄様、止めなかったの!? キャロも、キャロも結婚って…… 陛下って何歳なの!? 歳離れてるはずですよね!? え、陛下ってロリコンだったの!? ええ!! そんなっ! それも衝撃……!!!」


まさか、私たちの国の陛下がロリコンだったなんて……そんな。

嫌だ、そんな真実、19歳にして(精神年齢は別)知りたくなかった………っ!


私は言葉を失くした。

ああ、そんな。

ロリコン陛下なんて最悪。

キャロはお母様ともジュリ姉様とも似ていて凄く可愛らしいし、愛らしいから、きっとロリコン陛下にはすぐに気に入られて寵愛を受けるに違いない。

ジュリ姉様なら、さらっと受け流して本番、なんていかないだろうけど、キャロは、きっとその場の雰囲気に流されて………っ!!


「お嬢様、陛下がロリコンだと決めつけるのは早計かと。そもそもキャロル様は、好きでもない男性に迫られて体を許そうな方ではありません」


「ふぇ!? どうして心の中が分かったの!?」


「……口に出てたわよ、ティー。それと、私もキャロも陛下と結婚なんかしていないわ」


「キャロが陛下と婚姻を結ぶなら父上は既に国を出られている。流石にそこまで母上馬鹿で腐っていない……はずだ」


口ごもった兄様はスルーして、それより大事なことを耳にした。


「結婚、してない?」


それに、しっかりと頷いてくれた姉様に、ほっと息をつく。

が、後宮にはいった、なら陛下と結婚、という意味では?


「どういう事ですか?」


「父上がそこら辺も話してくれていると思っていたんだが……まぁ、詳しく話す前に、魔法を使おうかなと」


「え?」


「今使ってる魔具は試作品だから、そんなに効果は長くないんだよ。だから、そろそろ切れる……ほらな? だから、私がもう一度かけ直す、と」


兄様が、ぱぱっと魔法をかけ直して、準備は……


「ルリ、座って。これは命令」


「……かしこまりました」


万端!

兄様、何言っても構いませんよ!


意気込んで両手の拳を握った私に、表情を緩めてくれた二人を見て、少し恥ずかしくなった。


「じゃあ、話そうか」




結局、本題に行かなかった…!!

次こそ、色々話しますからっ!

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