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透明人間さん◎

「今から君達には最終試験を受けてもらう。これを合格すると一人前だ。」

学校で校長先生が真剣な表情で口にした。

教卓の前には世界の裂目が渦巻いている。

結構デカイ。

何処に繋がっているのかわからないほど先は真っ暗だ。

前日に担任に言われていたから心の準備はしてある。

他の奴等もそうだ。

しっかりと頷いて決意を示す。

全員を見回した校長先生が最終試験の最終確認をする。

受からないと、もう二度とこの世界には帰れない。

「条件は簡単。

これから人間界に行き、目を見詰められながら名前を呼ばれる。無論、『名前を呼んで』と言ったら即失格。上手く言い換えて呼んでもらうこと。期限は無い。合格すると世界の裂目が開くから、そこから帰って来なさい。

質問はあるか?」

長い髭を触りながら私達を見渡す校長先生。

教室の入口に立つ担任は不安の色を隠せない。

爪を噛んで気を紛らせている。

校長先生の顔色も優れない。

心配する二人や緊張している仲間を他所に、私は夢の実現を目前に興奮していた。

最終試験合格もあるが、もう一つの野望があるんだ。

人間界で、私は友達をつくりたい。

たった一人でいい。

出来ればその友達に名前を呼ばれたい。

私はやるんだ。

夢は実現してこそ意味を成す。

「では、始め!」

校長先生の掛け声を合図に、私達は渦の中に飛び込んだ。




人間界にやって来た。

最終試験をクリアする為に。

私は透明人間。

人や物に触れない、空気のような存在。

人間はそう思っている。

…しかし、本当は違う。

触れるんだ。

話せるんだ。

成人だと認められれば、何にでも触れる。

存在を認めてもらえる。

人の輪の中に、無条件で入れるんだ。

だから、この最終試験に受からないとならない。

成功しなければ、人間界を永遠に放浪しなくてはならない。

一生孤独だ。

そうならないように、成人と認定されるように、私はやる。

家族と再会する為に。

人間界で“友達”を作るために。

そう決意して、世界の裂目に飛び込んだんだ。


最終試験を受けた仲間は少ない。

透明人間自体、他の奴らと比べて人口が少ない方だからだ。

一番多いのはやっぱり吸血鬼(ドラキュラ)だな。

澄ました顔がムカつくけど、勢力は一番だ。

思い出すのは止そう。

イライラするだけだから。

今は試験に集中しないと。

私の仲間はバラバラに飛ばされたようだ。

透明人間同士なら存在が把握出来るけど、辺りを見回してもそういうのは見当たらない。

ザワザワ…

此処が私の試験場所。

人間が沢山いる。

こういうのが都会か。

―よし、やるぞ。

手始めに、前方からやって来る男性に声をかけてみる。

「あの、」

「…。」

無視された。

次は女性に話しかける。

が、前と同じ。

街を歩いても誰にも気づかれない。

肩が当たってもそこだけ通り抜けて、ぶつかった人間はその事を知らずに歩いて行ってしまう。

動物もそうだ。

猫以外は触ろうとしても触れない。

手がすり抜けてしまうだけ。

猫は魔女の遣い者が紛れてるから気づいてはもらえる。

でも、触れない。

それから手当たり次第に話し掛けた。

目についた人間は片っ端に喋りかけた。

けれど、不思議に思われるだけで、空耳と勘違いされて終わり。

振り返る人はいない。

霊感が強い子供にも無視される。

いや、透明人間に霊感が関係してるのかはわからないけど。

それくらい必死に喋りかけた。

…だが、誰一人として私を知る存在は現れなかった。

視界が涙でボヤけてきた。

迷子になった子供のようにボロボロと大粒の涙が溢れて止まらない。

ドクンッ!!

強い孤独感が全身に押し寄せる。

今まで感じたことのない恐怖。

まるで此処にいる奴ら全員に押し潰されてしまいそうな恐さ。

みんながみんな、私を空気のように扱っている錯覚に襲われる。

もう、色々限界。

立っているのも厳しくて、スタンとその場に座り込んでしまった。

ガタガタと手や足が尋常じゃない震えて止まらない。

助けてほしい。

しかし、無情にも人間は私をすり抜けて先を急ぐ。

…本当は此処にいるんだ。

寂しい。

悲しい。

夏なのに寒い。

誰か気づいてくれよ。

わかってくれよ。

頼むから。

後生だ。

たった一人で構わないから。

一回だけで良いんだ。

「誰か…っ、」

私の名前を呼んで!

口にする事を許されない願望が喉まで出る。

身体を強く抱き締めて、キュッと下唇を噛み締める。

自分の存在が人の波に消えてしまわぬよう、もっと、もっと、腕が痛くなるまで己を掻き抱く。

一向に存在を気づいてもらえない虚しさ、声をかける無意味さなどに涙が流れた。

学校のやり方を実践したいのに人間は早すぎる。

目を合わせられない。

これさえやれば、触れるはずなのに。

クソ、クソ…ッ!

ダン!

コンクリートの地面を叩いても手が痛いだけだった。


―――


嘆いていても何も始まらない。

冷静になった私は腕で涙を振り払い立ち上がった。

可能性は必ずある。

きっと、絶対、確実に。

場所を変えよう。

気配でわかってくれる人間が必ずいる。

地球は広いんだ。

場所を移動してはいけない、という条件は無い。

問題ない筈だ。

思い立ったらすぐ行動。

人を避けることなく全速力で駆け出した。


―――


「…疲れた。」

色んな所を歩き回った。

時には走ったりしたけど、結果はゼロ。


カフェで喋っているオバサンを狙ってみた。

が、顔がひっきりなしに動いたり、目を閉じて爆笑して中々止まってくれない。

一人必死に視線を合わせようと体を動かした。

しかし、成果は得ず。

首と腰を痛めただけ。

無駄骨だった。

だが、諦めない。


次は老人に絞ってみた。

この人達は動きが遅い。

目線を一分間交える何て簡単だろう。

安直な考えだが、これが上手くいった。

痛む腰に鞭を打って、ずっと顔を見上げながら眼鏡のお婆さんを見詰めていた。

キツかった。

「へっ?」

「あ、どうもこんにちは。」

驚いた顔のお婆さん。

やっと気づいてくれる人間に出会えた。

…そう思っていたのに。

「イギャァーーーーッッッ!!!」

キーン

何処からそんな声を出せたのか詳しく教えてもらいたいほどの絶叫。

ポロとお婆さんの口から入れ歯が落ちた。

私も驚いてガンと後頭部を打ってしまう。

ズキズキと鈍く痛む。

突然目の前に現れた私にお婆さんは気絶してしまった。

周りの人がどよめく。

今ならお婆さんに触れるけれど、それをすると周りの人だかりにはお婆さんが空中に浮くという奇怪現象になってしまう。

「ごめんなさい。」

白目を剥いて気絶するお婆さんに深々と頭を下げ、その場を逃げ出した。

ま、まだやれるぞ。


次は店員だ。

コンビニで暇そうにしているお兄さんがターゲット。

レジの奥でぼーっとしているお兄さんをジーッと見つめること一分。

あ、うたた寝し始めやがった。

バカヤロウ。

目を閉じてたら意味ないじゃないか。

開けろ。

薄目でいいから開けて。

お兄さーん。

お兄さぁん?

起きてよー。

お前、一応仕事中だろ。

あ、厳ついオッサン来た。

パーン!

頭からいい音が鳴って、横を向くと厳ついオッサン。

怒ってらっしゃる。

サァーと真っ青になるお兄さん。

首根っこ掴まれてズルズルと奥の部屋に引きずられた。

巻き込まれたくないな。

よし、諦めよう。

動くドアをすり抜けてコンビニを後にした。


それから色んな年代を狙ったが、怖がられたり、逃げられたり、時には殴られたりと散々。

節々が痛い。

顔が特に痛む。

親にも殴られたことないのに。

あ、公園がある。

そういえば立ちっぱなしだったな。

「一休みしよう。」

透明人間にも休憩は必要です。

子供がはしゃぐ何処にでもありそうな公園。

ベンチ空いてるかな。

周りを見渡すと殆どが女性に占領されている。

この子供達の母親だろうか。

沢山いるな。

透明人間だからお互い気にする必要がないけど、私が遠慮したい。

気まずくなるし。

うーん、空いてないかな。

あ、一脚だけ一人で座ってる。

帽子を被ってる中学生くらいの男の子。

前髪がやけに長いな。

あれじゃ前が見えないだろう。

黒い髪が肩につく長さで、遠目で頭だけだったら女の子に見えなくもない。

日向ぼっこしているのか一人でぼーっとしてる。

老人みたいだ。

まるで平和を味わってるみたい。

よし、お隣にお邪魔しよう。

地べたに座るの嫌だし。

子供に先越されたら公園の柵に腰掛けるか。

腰をトントンと叩きながら、入口に一番近いベンチに向かって歩き出した。

近くに来たはいいが、やっぱり気づかれない。

その悲しみにも漸く慣れた。

…やっぱ傷つくけど仕方ない。

ベンチに白くて長い棒みたいなのが立て掛けてあるけど、彼のだろうか。

変わった棒だな。

そんなことより先ずは一休み一休み。

一応隣に座るのを断っておこうかな。

無視されるのは目に見えてるけど。

「お隣失礼しまーす。」

「あ、どうぞどうぞ。スペースありますか?」

「!?」

ガタッ

い、今!

返事した!?

私の言葉に!?

今まで無反応だったのに!?

え、実は気配で気づいてたけど無視してたの!!?

それちょっと、いや大分寂しい。

…けど、めちゃめちゃ嬉しい。

諦めながら呟いた言葉に反応してくれる日常を取り戻せた気分。

結局地面に座ったけど、このまま嬉し泣きしてしまおう。

やっと出会えた。

会話できる人間に。

「あの、大丈夫ですか?コケた音が聞こえたけど。後、もしや泣いてる?」

「いや、誰かと喋ったの久しぶりなんで、つい。お構い無く。」

男の子が私の方に顔を向けて小首を傾げる。

ウザがられないよう慌てて涙を拭い、砂を払ってから右隣に座る。

顔がニヤけてしまうのは仕方ない。

嬉しいなー。

えへへ。

怖がられないのって何時ぶりだろ。

そんなのどーでもいっか。

隣でごそごそと肩掛け鞄を漁る男の子。

どうしたのだろうか。

「これ、まだ使ってないからどうぞ。

後、この時間帯には此処にいるんで、話し相手くらいにはなれますよ。」

「あ、ありがとう。優しいんですね。」

差し出されたハンドタオル。

受け取ろうとそれを掴もうとするが、出来なかった。

透明な手がタオルを透かし、人間界に来て初めての好意を受け取れない。

また涙がじわりと滲む。

どうしよう。

「どうしたの?」

「見ての通り、私、透明人間なんです。だから、その、とても嬉しいんですが…触れません。ごめんなさい。」

膝の上で拳を固く握り締める。

見えない私に優しくしてくれたのに。

ハンドタオルさえも触れない自分が悔しい。

ごめんなさい。

そして、ありがとう。

凄く嬉しかったです。

俯いている私の隣でタオルをしまいながら男の子が喋る。

「へぇー、透明人間だったんだ。そうとは知らずに、何かごめんね。」

「…え?私の体、見えないでしょ?何もないだろ?」

両手を大きく広げてアピールしてみる。

目の前で手を振っても男の子は気づいてない。

すると、何か思い出したように話し出した。

まるで、昨夜の晩御飯を思い出したノリで。

「ああ、言ってなかったね。俺、元々何も見えない“盲人”なんだ。僅かな光と暗がりの判別しか出来ない。ぶっちゃけ、声掛けられなきゃ気づかなかった。」

「ご、ごめん。私の方こそ、そうとは知らずに…ごめん。」

「気を遣わないで。

じゃあ、ここはお互い様ってことで解決。」

深々と頭を下げる私に明るく話す男の子は、全く気にしていない様子だった。

パン、と手を叩いて笑う。

おおらかな子だな。

ちょっと尊敬。

じゃあ、一分間見詰めても意味ないかな。

いや、可能性はあるかもしれない。

一か八かやってみよう。

上半身を横に向けて、口だけ微笑する男の子に挙手をした。

「実は、触れるかもしれない方法があるんだけど、やってみない?」

「俺にもできる?」

「一分間見詰め合うだけだから簡単だ!」

「盲人だけど、一応やってみようか。暇だしね。」

意気込む私の熱意を感じたのか、被っていた帽子を外して前髪を手でわける。

露になった顔は良くも悪くもなく、普通の顔だった。

閉じていた瞳が開かれる。

あ、周りの人と違う。

そう思った。

だって、視線が全く定まらない。

上下左右に忙しなく動く眼球。

無理かも。

…いや、諦めるのはまだ早い。

スッ

男の子の顔を包み込む。

触れないけど、何となく。

こうしてやりたい気分。

「真っ直ぐ見てられる?」

「頑張ってみる。」

日焼けしていない顔が近い。

もし成功したら、気まずい。

恥ずかしくて死ねるかも。


一分後、奇跡は起きた。

男の子の肌の感触が手に感じる。

神様がオマケしてくれたのだろうか。

頬をムニと摘まめる。

…感動。

また嬉し泣きしてしまった。

目頭熱い。

ポタポタと膝の上に落ちる涙。

「何事もやってみるもんだ。

これで君の涙が拭ける。」

「う゛ぅ~~~。」

「涙脆いね。よしよし。」

恐る恐る伸ばされた右手が温かい。

そっと涙を掬ってくれる。

曲げた人差し指に涙が溢れて零れる。

目に指が入らないように気をつけてくれるのがわかる。

彼は本当に優しい。

その温もりが寂しかった心を癒してくれる。

幸せな一日だ。


ザリッ

いつの間にか近くに人が立っていた。

顔を上げてどんな人か伺う。

が、物凄く後悔した。

紫色の頭に厳つい顔の青年。

めっちゃ睨んでる。

恐い。

逃げたくなるくらい怖い。

硬直した私を他所に、彼は顔を上げて青年に声をかけた。

ああ、なんて命知らずなんだろう。

逃げても良いですか?

「こんにちは不良君。学校帰り?」

「よう坊主。今日はバイトが入ってねぇから来てやった。坊主は一人で何してんだ?」

あれ?

お知り合いですか?

とても親しげに会話していらっしゃると思うのは私だけ?

「透明人間さんとお話中。一分間見詰め合うと透明人間さんが見れるんだよ。しかも触れる。

不良君もやってみて。そんで、俺に容姿を教えて。」

「吸血鬼の次は透明人間か。坊主の周りは変わってんな。

その透明人間はそこにいるのか?」

トントン拍子に話が進む。

あれ、これは見詰め合わなきゃいけないフラグ?

この強面の青年と?

私に死ねと?

チラッと青年の方を盗み見ると、ガン見してた。

恐っ!!

心臓が一瞬止まったし!

いや、透明人間にも心臓はありますからね!

失礼な!

……もう、これは腹をくくるしかないな。

目が見える人の方がいいし。

試験クリアの為。

試験合格の為。

「じゃあ、暫く動かないでくださいね。」

「うわ、喋った。本当にいるんだな。」

「疑うなんて酷いなぁ。」

素直に驚く青年。

慣れはしたけど、やっぱりグサッてくるな。

隣で拗ねる男の子を無視して見詰め合う。

一分経過。

すると、青年の反応が変わる。

「スゲェ、マジで透明人間だ。ちょいホラーだけど。」

「私の意思で特定の人だけ見えなくさせたり出来ますよ。ほら。」

念じてみせると青年が驚愕の表情で辺りを見回す。

姿を消したのだ。

また同じ用途で念じると視線が合う。

一回すれば後は自由。

見えなくさせたり、触れなくさせたり、認識してほしければ姿を現せばいい。

声だけはずっとこのままだけど。

「マジか。透明人間って初めてだけど感動すら覚えるわ。」

「ありがとうございます。」

率直な感想にちょっと照れる。

そんなに褒めなくてもいいのに。

顔が赤くなるのがわかる。

ペタペタ

ベンチを軽く叩く音がする。

男の子が何かを探すように前屈みでベンチを擦っていた。

一体何をしているのだろう。

無くした物は特に思い当たらないけど。

よくわからずにいると、何かに気づいた青年が動いた。

「ちょっとアンタ退いてくれ。」

「は、はい。」

私を端に退けると青年はベンチの裏に手を伸ばして何かを拾った。

パンパンと砂を払ってやり、まだ一生懸命探している男の子の頭に被せる。

帽子の上にポンと片手を置き、フッと微笑んだ。

この時の青年の笑みは、今まで見てきた中で特に優しいものだと感じた。

探し物が見つかったのか男の子はニヘラと頬を緩める。

喜んでいるのがよくわかる。

「ありがと。帽子がなくて焦ってたんだ。」

「どうせ風で落ちたんだろ。今度からはちゃんと握っとけ。」

「不良君がいない時はそうしよっかなー。」

「…ったく、調子に乗るな。」

ペチン

男の子の額を軽く平手打ち。

音で痛くないのがわかる。

叩かれたのにケラケラ笑う男の子。

じゃれるように青年の腕を引っ張る。

苦笑しながらも相手をしてやる青年も楽しそうだ。

手加減しながら遊んでいる。

男の子の方も限度をわきまえながら手を出している。

青年の方が一枚上手のようだ。

私は二人の邪魔にならないよう姿を消して見守った。

これが“友達”か。

羨ましいな。

楽しそうだな。

いいな、友達。

私も交ざりたい。

でも、駄目だよね。

…よし、そろそろお別れしなくちゃ。

試験を終わらせないと。

ツンツン

注意を引くよう青年の肩をつつく。

「ん?なんだ?」

案の定振り返ってくれた。

膝の上に男の子を乗せて脇腹を擽る手を止めない。

男の子はずっと大笑いして悶えている。

ヒーヒー言って膝をバシバシ叩いて抵抗してる。

青年に近づいた。

この恐い顔に慣れてきたな。

自分の目を指差して青年にお願いする。

これが最終試験。

「私の目を見て、今から言う言葉を繰り返してくれない?」

人間に見詰められながら名前を呼ばれること。

短い間だったけど、二人共ありがとう。

唇を動かした。

涙が頬をつたう。

最後には綺麗に笑って、ちゃんと『バイバイ』言えるかな。



―あれから数日後。

学校で卒業証書を貰った私は急いで仕度をしていた。

旅行鞄に荷物を詰め込んで忘れ物を確認する。

後ろで家族が心配そうに見守る中、私は高揚していた。

また二人に会えるんだ。

人間の友達に。

先ず、再会したら名前を聞こう。

そして居候させてもらおう。

食事は基本的に空気だから、きっと問題ない。

無理矢理にでも居座ってやろう。

お土産はどうしよう。

家族に頼んでおくか。

もし人間界で何かあっても家に帰れる距離だし。

大丈夫大丈夫。

頬がゆるゆるなのは仕方ない。

青年と男の子、ちゃんと覚えててくれるかなぁ。

忘れてたら殴ろう。

「ふふっ、待ってろよー!」

グッと両手を突き上げて叫んだ。

気合い充分。

これから先の楽しい人生を夢見て、私は部屋を飛び出した。

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