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男装の王妃

靴を履き進むと大きな建物が建っていた

側面にたくさんの窓があり、日差しを遮る薄い衣が風に乗って揺られている


正面の入り口では白い衣装を着た者達が慌ただしく出入りしている

男性がいることに紫紋達は慌てて扇で顔を隠す

貴婦人のたしなみとして家族、親族以外の男性には顔を見せてはいけない決まりがある

もし不埒者が娘に手を出すといけないのと、顔を見せないことで神秘性が増し噂が広がれば上流階級に嫁げる可能性があるからだ

すでに嫁いでいるとはいえ、昔からの決まりに体が動き急いで扇で顔を隠す


だが、そんなことは一切気にせず道案内の女官はスタスタと入り口目指して歩んでいる


「待って!!」


呼び止めることも出来ず、歩み続ける女官を必死に追いかけて意を決して入り口へと飛び込んだ


つぅぅんと独特の薬草の香りに血の匂い

むせ返るような匂いに今すぐにでも引き返したいが

敵が真っ向から呼び出したのだ

ここで逃げるわけにはいかない

姫としての意地と敵を憎む憎悪から紫紋の足は前へと進んだ


「王妃様。紫紋様をお連れいたしました。」


女官が大勢の人だまりに向かって声をかけた

するとそこにいた者達は一斉に紫紋達を見つめた


大勢の男達の視線に慌てて紫紋は扇で顔を隠す

ザワザワとざわついている

声の中には紗萄国や紫紋など単語が聞こえる

臣下達が自分たちのことを話すなどこれほどの辱めがあるだろうか

唇を噛みしめ、扇を持つ手が震えてくる


「こらこら初々しい息子の嫁を虐めないで!!」


忘れることのない声が聞こえたと思うと人垣が割れて男性が着る衣装を纏い、髪を結い上げてこちらに歩んでくる王妃神楽がいた


開いた口がふさがらないという言葉があるがまさにその通りだ

一国の王妃が大勢の男達の中で男装をしているのだ


「おはよう、いやだいぶ日も昇っているからおそようかな?」


笑みを浮かべる神楽にやはり40を越え大勢の子持ちの女性には見えない

あまりにも若すぎる。紫紋と少し年の離れた姉妹といっても誰もが信じるだろう


「急に呼び出してすまなかった。少し話しがしたいと思って。・・・翔大!!後は任せても大丈夫?」


紫紋に向き合っていたが人垣に声をかけ一人の男性が出てくる


「はい!お任せください!!それより・・・」


「心配するな。ではここを任せたぞ。・・・では、紫紋姫。こちらは人が多いからこちらにどうぞ」


「王妃様!!その様なこと我らが!!」


「気にしないで。私が好きでやっているのよ。」


紫紋達を連れてきた女官が慌てて止めようとするが、神楽の笑みに頬を真っ赤に染めて顔を伏せてしまう


「・・・はい。王妃様」


可愛らしく返事をする女官の頭を撫でて神楽は歩み出した

頭を撫でた瞬間何処からかキャーーーと悲鳴が上がった


紫紋達は前で繰り広げられる光景にただ黙ってついて行くしかなかった




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