娘の決意
どこか遠くでチュンチュンと鳥の鳴き声がする
ふっとあがった意識の中、日の暖かさが感じる
体が休息を求めているが
日の光についつい瞼をあげてしまった
パチパチと何度か瞬きをして
バッと文字通り飛び起きた
慌てて周りを見渡すがこの部屋には自分一人しかいないようだ
「はぁ~」
思いっきり溜息を吐いて思い出してきた
あの後大声で泣き、頭を撫でる手の温かさに負けていつの間にか眠ってしまった
(もうヤダ・・・ホント、何やってんのよ!!私!!あり得ない!!あり得ないから!!!敵の前で無防備に泣くなんて!!あぁ!!本当に時間を巻き戻して欲しい!!)
掛け布団の上に上体を倒してボスッボスッと拳で叩く
(涙を流すことなどとうの昔に忘れてしまったと思っていたのに、・・・あいつが悪いの!!あいつが!!頭撫でたりするから!!そうよ!あいつは敵!!我が祖国の敵なのよ!!)
哀れ布団。悲鳴をあげることが出来ない布団はサウンドバック状態で叩かれ続けた
「紫紋様。お目覚めのお時間でございますよ。紫紋様。」
遠くの扉で自分を呼ぶ声がする
ふと顔を上げると紗萄国から連れてきた女官達が次々に入ってくる
「紫紋様。ご無事でしたか!」
紫紋の乳母であった睡蓮が寝台にいる紫紋に駆け寄ってきた
「何故あのような・・・あのようなご決意があったなら、どうして私に話してくださらなかったのですか。姫様の代わりに私が命を賭してでも遂行いたしましたのに・・・」
「睡蓮・・・」
「そうです。姫様。私たちも覚悟して参りました。姫様のためならこの命捨てられます。」
睡蓮に続けと紫紋の傍に女官達がやってくる
「みんな・・ごめん・・・私のせいで・・・。みんなこそ何もなかった?大丈夫だった?」
目に溜まる涙を認めたくなくて話をそらそうとする
「私たちは昨日のあの後、一度は牢に入れられましたがあの化け物に姫様の世話をするようにと牢から出されました」
睡蓮が言う化け物とはこの璉国の王妃神楽のことだ
紗萄国にとってはこの神楽という存在は禁忌だった
紗萄国をたった一人で敗北に追いやった化け物として、上流階級の中では特に恨まれていた
「あいつが!何を考えているの・・・」
婚儀の間で暗殺をしようとして飛びかかったときの王妃の顔を見た
王の傍で笑う姿は、御年40を越えた女とは思えぬほど若かった
あれで6人の子持ちと考えるとますます化け物だ
紫紋が王妃のことを考えていると
「紫紋様。王妃様の伝言を預かって参りました。入室の許可をお願いします。」
扉の向こうから紫紋に対して入室を求める声が聞こえる
「このようなときに!姫様。ここは断りましょう。」
睡蓮が早速断ろうと立ち上がると
「よい。構わぬ。会おう。されど少し着替える時間が必要だ。待たせておいて。」
寝台から降りてスタッと立ち上がった紫紋は寝間着の腰紐を取り始めた
それに慌てて女官達は姫の衣装を用意し始めまた
(あやつが何を考えているのか知らない。だから敵を知り、必ずこの思いなし遂げる!!)
女官が広げる衣装に袖を通しながら紫紋は決意を新たにした
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