初夜での出来事
題名に反して全くエロくありません。
期待されましたら、ごめんなさい。
「・・っぅ・・・」
ガンガンと痛む頭に手を当ててゆっくりと上体を起こす
「・・・ここは・・!!!はっ!!!」
バッと周りを見渡し身構える
すでに外は夜なのか窓は暗くなり
部屋は蝋燭によって赤々と部屋の中を照らしている
周りは多くの璉国の調度品に溢れ、どれも一級品だと分かる
紫紋がいるのは寝台の上
恐る恐る何か武器になるようなものが目で捜す
すると寝台の傍の台の上に先ほどまで持っていた小刀が乗っている
すぐさま手を伸ばして胸元に抱きしめる
「はぁ。」
大きく息を吐いて先ほどのことを思い出す
璉国との同盟のための婚儀での花嫁は刃をとりだした
暗殺は未遂となり取り押さえられたが
殺そうと思った夫になるはずの竜祥の母親、神楽に息子の花嫁になれと言われ
(何が嫁になれよ!!なれるわけないでしょう!!あんな男に嫁ぐなんて!!)
何かが紫紋の中でキレた
最後の力を振り絞って取り押さえている竜祥の手を振りほどこうとした
竜祥も母親の突拍子もない発言に取り押さえていた手に力が緩み、紫紋を取り逃がしてしまう
「ふざけるな!!キサマなど!!」
ドンっ
首元に襲う打撃に意識が遠のいていく
薄れ行く意識の中、最後に優しく抱きしめられる温かい腕に懐かしい父親を思い出させた
ガッチャ
ビック!!!
いきなり開いたドアに紫紋は全身で驚いた
「・・あっ・・気づいたか?」
ドアを開けたのは夫になる予定だった竜祥が立っていた
ゆっくりと寝台へと近づく
「こ、来ないで!!何なの貴方は!!私は貴方の母親を殺そうとしたのよ!!」
胸元に握りしめていた小刀の切っ先を向ける
力みすぎて小刀が震える
「そんなに力んでいたら、狙いがつけられない。ゆっくりと深呼吸をするんだ」
身体の一歩手前で止まり腕組みをして、まだ幼き姫を見る
化粧が乱れて幼さが顔を出す
ガタガタと震える様は小動物のように可愛らしい
「だから、そんなに震えていたらダメだって」
「そ、そんなことは・・・」
紫紋の言葉はそれ以上紡げなかった
離れていたはずの竜祥が一瞬で近づき、小刀を掴む手首を掴まれた
「ほらすぐに捕まった」
優しく笑いかける竜祥の笑みに紫紋の緊張は限界を超えた
大きく開いた瞳からポロリと雫が溢れだした
一つ・・一つ・・落ちる度に
唇を噛みしめ嗚咽を堪える
「何があるのかは知らない。今は全て忘れて泣けばいいよ。」
憎い人の子供なのに、この声が、接し方が父様に似ている
「うわぁぁぁぁぁあああああん」
張り詰めた緊張感から解き放たれた紫紋は大声で泣いた