王太子の想い
「父上。母上。姫を部屋に連れて行きます。」
意識を失い力を失った紫紋を抱き上げ、目の前にいる両親に声をかける
「竜祥!!その女を!!「父上。この者は我が妻にございます。未来の皇后です。私が唯一望む妻です。この気持ちは一番あなたが知ってるはずです。睡蓮、姫の部屋の用意をしていろ。」
今まで気丈にたっていた睡蓮であったが、神楽が土下座したときから腰を抜かして床に座り込んでいた
この場には両親だけを残したかった竜祥は睡蓮を部屋から出して自分も早々と部屋から退室した
扉を閉める瞬間
「ごめんなさい・・・」
「君のせいじゃない」
泣く母を必死になって慰めている父親の声が聞こえた
寝台は昨日と同じように用意されていた
ゆっくりと紫紋を寝台に横たえながら目元に溢れた涙を払う
「・・・君をこれから何度も傷つけることになるかもしれない・・それでも俺は・・・君を失いたくない・・・。」
愛おしそうに撫でる姿に睡蓮は意を決して声をあげる
「申し上げます。殿下は我が紫紋姫をどうお思いなのでしょうか?」
睡蓮を見つめる皇太子の瞳は冷たかった
先ほどの王と何ら変わらぬ冷たさに睡蓮の背筋は冷え冷えとした
「・・・紫紋は我妻だ・・・それだけだ・・・」
たった一言それだけを残して竜祥は紫紋の部屋を後にした