戦果
膝の感触が、まだ頭の下にあった。
柔らかい。
温かい。
そして、さっきから少しだけ甘い匂いがする。
……いや。
これ普通に凛の膝だよな。
俺は少しだけ顔を横に傾けた。
視線を右に向ける。
まだ少し視界がぼんやりしている。
だが、気になる気持ちの方が勝った。
「……鑑定」
小さく呟くと、視界に情報が浮かび上がる。
【ストーンゴーレム】
・高純度魔石 ×2
【スチールゴーレム】
・鋼巨兵のコア ×1
・スキルの種【防御力上昇:中】
・巨人の鋼槌 ×1
……。
思わず息を呑んだ。
「っ……」
その瞬間、肺が軋むんで咳が出た。
「だ、大丈夫ですか!?」
凛が慌てて顔を覗き込む。
「あ、あぁ……大丈夫だ」
俺は小さく息を吐いた。
だが、視線はドロップから離れない。
少しの沈黙。
そして凛が言った。
「神谷さん」
「はい」
「魔石はさておき」
凛がゆっくり言う。
「これ……五百万以上はありますよね」
俺は苦笑した。
「……多分な」
スチールゴーレムのコア。
スキルの種。しかも基礎能力の中クラス。
そして巨大武器。
普通に考えて、かなりのレアドロップだ。
凛が続ける。
「正規ルートで全部売れるとは限りませんけど。それでも」
少し考えてから言う。
「五百万くらいにはなりそうです」
「……すごいな」
俺は呟いた。
ついさっきまで、死ぬかと思っていた。
それが今では、この戦果だ。
凛が少しだけ笑う。
「ケガが治ったら」
そう言って続けた。
「お祝いしましょう」
俺も笑った。
「楽しみだ」
少し静かな時間が流れる。
坑道の空気はひんやりしているが、膝枕のせいか妙に落ち着く。
俺は小さく息を吐いた。
「……ありがとう」
凛が首を傾げる。
「え?」
「ありがとう、凛」
「改まってどうしたんですか?」
俺は少し考えて、言った。
「最後のスクロールなんだけど」
「凛が薦めてくれたアイテムだったろ」
「……あ」
「それに」
俺は続ける。
「多分、今までの俺だったら」
少し笑う。
「途中で諦めてた」
凛が黙って聞いている。
「でも、最後…凛の顔が浮かんできてさ」
少し照れくさい。
「それで、一瞬だけ」
「限界以上の力が出た気がする」
凛の目が少しだけ大きくなる。
俺は肩をすくめた。
「だから」
小さく言う。
「会えてよかった」
その瞬間。
凛が顔をしかめた。
「そんなセリフ言って」
少し睨む。
「まだ死なないでくださいよ」
「え?」
「これからですよ」
凛は真剣な顔で言う。
「これからも。いっぱい一緒に冒険するんですから」
少し沈黙が流れた。
そして。
俺は笑った。
「……そうだな」
凛も少し笑う。
そのまましばらく、二人で笑った。
それから俺は言う。
「じゃあ」
凛を見る。
「帰るか」
凛が頷いた。
「はい」
採掘場ダンジョンの奥で。
俺たちは静かに立ち上がった。
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ギルド活動報告書(圧縮)
ギルド活動報告書
探索者ギルド提出用記録(仮)
探索者名:神谷
同行者:凛
所属:個人パーティ
依頼種別:討伐 / 素材採取
対象ダンジョン:郊外採掘場ダンジョン
探索階層:第一層〜第二層
探索日:〇月〇日
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■探索概要
郊外採掘場ダンジョンにて、依頼対象であるストーンゴーレムの高純度魔石採取を目的として探索を実施。
探索は第一層から開始し、第二層到達を一区切りとして活動を行った。
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■交戦モンスター
・クレイゴーレム(複数)
・ストーンゴーレム ×2
・スチールゴーレム(レアモンスター)
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■戦闘結果
クレイゴーレムとの戦闘により探索者神谷が戦闘経験を獲得。大きな被害はなし。
第二層到達後、ストーンゴーレム二体と交戦。連携戦闘により討伐成功。
その直後、瓦礫地帯よりレアモンスター:スチールゴーレムが出現。
同行者凛が負傷。探索者神谷が単独で交戦し、討伐。
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■被害状況
探索者神谷
・右腕骨折(ハイポーション処置済)
探索者凛
・頭部打撲(ポーション処置済)
致命傷なし。
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■回収ドロップ
クレイゴーレム
・土精の指輪 ×3
・スキルの種【防御力上昇:小】 ×2
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ストーンゴーレム
・高純度魔石 ×2
(依頼対象素材)
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スチールゴーレム(レアモンスター)
・鋼巨兵のコア ×1
・スキルの種【防御力上昇:中】 ×1
・巨人の鋼槌 ×1
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■特記事項
第二層にてレアモンスター:スチールゴーレムの出現を確認。
採掘場ダンジョンにおけるレア個体の出現例としてギルド側で記録を推奨。
また、瓦礫地帯の崩落により一部地形が変化している可能性あり。
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■探索評価(自己報告)
依頼達成:成功
探索続行:第二層で終了
帰還方法:簡易転移石




