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指輪

クレイゴーレムの崩れた泥の中で、小さな光が転がった。


カラン、と乾いた音が坑道に響く。


「ドロップだ」


俺はしゃがみ込み、鑑定を発動する。


【土精の指輪】

防御力+3


「……指輪?」


思わず声が出た。


凛も隣で覗き込む。


「装備品ですね」


少し驚いた顔をしている。


「雑魚モンスターから装備が出るんですか?」


「珍しいのか?」


「かなり」


凛は小さく頷いた。


俺は指輪を拾い上げる。


石のついたシンプルな指輪だった。見た目は地味だが、防御力が上がるなら十分当たりだ。


「初討伐の記念だな」


俺は笑った。


「一生の宝物にする」


凛が少しだけ笑う。


「それなら、私も欲しいです」


そして拳を握った。


「もう一匹狩りましょう」


「神谷さん、頑張ってくださいね」


にこっと微笑む。


……。


「スパルタコーチだな」


俺は苦笑する。


「当然です」


凛は平然としていた。



結果から言うと。


第二層に着くまでに、クレイゴーレムを何体か倒した。


そして。


土精の指輪が三つ。

さらに、スキルの種が二つ。


【スキルの種】

防御力上昇:小


かなりの収穫だった。


しかも戦闘は順調で、俺も凛もほとんどダメージを受けていない。


「……無傷だな」


腕を回してみるが、痛みはない。


凛が頷いた。


「いいペースです」


俺は少し気分が良くなる。


「意外といけるな」


その瞬間。凛がぴたりと足を止めた。


「神谷さん」


「ん?」


「慣れてきた時が一番怖いです」


……。


「はい」


俺は素直に頷いた。



坑道をさらに進む。


やがて採掘跡が広がる空間に出た。


瓦礫の山。

崩れたレール。

折れた支柱。


その中央に、二つの影が立っていた。


「ストーンゴーレムですね」


凛が言う。


身長二メートルほどの岩の巨体が、ゆっくりこちらを向いた。


二体いる。


「風のスクロールを使えばすぐ倒せます」


静かな笑みを浮かべる。


「でも、せっかくなので連携を試しましょう」


俺は頷く。


「どうする?」


凛が言う。


「今回は私が注意を引きます」


「神谷さんが倒してください」


「了解」


凛は軽く手を振った。


「倒し方は任せます」


そう言うと、突然前へ飛び出した。


ストーンゴーレムが反応する。


重い足音。


岩の拳が振り上がる。


凛はその横をすり抜け、背後へ回り込む。


速い。


俺は鑑定を発動する。


【コア位置】

個体A:左脇腹

個体B:右肩背部


弱点が視界に浮かぶ。


その瞬間、俺は走り出していた。


ゴーレムの横から飛び出す。


ナイフを振る。


刃が岩の隙間に滑り込み、右肩のコアを砕いた。


ストーンゴーレムが音を立てて崩れる。


突然の出来事に理解が追いつかず、もう一体が俺の方を振り向く。


だが


その瞬間、凛が滑り込んだ。


鋭い突き。


脇腹のコアが砕けると同時に、岩の巨体が崩れ落ちた。


静かになる坑道。


俺は息を吐いた。


「……やりましたね」


凛が言う。


「だな」


俺は笑う。


「意外とあっけなかったな」


———コロ


背後から微かに瓦礫の崩れる音が聞こえた気がした。


その瞬間———巨大な鉄骨が空を切った。


「神谷さん!!」


凛が叫ぶ。


声に反応して、咄嗟に振り向く。


だが、遅すぎた。


———やられる


その瞬間、凛が飛び込んできた。


俺を突き飛ばす。


鉄骨は俺の頭を掠めて——


ガンッ!!


鈍い音が坑道に響く。


「凛!!」


体勢を立て直して振り向く。


凛が横たわっていた。


頭からは血を流し、ピクリとも動かない。


俺はすぐに凛を抱き上げ、瓦礫の陰まで運ぶ。


3本のハイポーションを取り出して1本を凛の頭にぶっ掛けた。


「……神谷さん…」


意識を取り戻したようだが、まだ目が虚だ。


やはり直接飲まないと効果が薄い。


残り2本の瓶も蓋を開ける。


「凛」


「飲め」


その時。


凛の指が目に入った。


さっき渡した土精の指輪。


……。


俺は浮かれていた。


ドロップ。

戦闘。

レアアイテム。


全部。


何をやってるんだ。


歯を食いしばる。


――反省は後だ。


今の凛では転移石は使えない。


退路は断たれた。


なら、今やるべきことは一つ。


「ここにいろ」


そういって、俺は立ち上がった。


振り向く。


瓦礫の山の上に、それは立っていた。


身長は二メートル半ほどで、全身が鋼鉄で覆われている。


赤い目が暗闇の中で鈍く光っていた。


【レアモンスター】

【スチールゴーレム】


俺はナイフを握り、小さく呟いた。


「……必ず」


「二人で帰る」


スチールゴーレムが動く。


鉄の足が地面を踏み砕いた。


構える。


一対一。


戦いが始まる。


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