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探索者

受付での手続きが終わるまで、少し時間がかかるらしい。


俺と凛は待合スペースの椅子に並んで座っていた。


さっきの会話――ミノタウロス討伐の噂は、まだ後ろのテーブルで続いている。


「でもさー」


「ほんとに強かったよ」「え、配信見た?」「途中からだけど」


女の子たちが楽しそうに話している。


凛は腕を組み、少し考え込んでいた。


「……神谷さん」


「ん?」


「ミノタウロスの素材なんですけど」


「ああ」


戦斧と魔核のことだ。まぁ、魔核は坂城に渡してしまったが。


凛は小さく声を落とした。


「しばらく換金しない方がいいと思います」


「なんで?」


「配信です」


凛が周囲をちらっと見る。


「思ったより話題になってます」


「今ミノタウロス素材を売ったら」


少し間を置く。


「結びつく可能性があります」


なるほど…確かにあり得る。


「…つまり」


「俺たちだってバレる?」


「はい」


凛は頷いた。


「そして神谷さんのスキルも」


そこで言葉を切る。


「レアドロップの量。普通じゃありません」


まあ、それはそうだ。


俺のスキルは《逆転鑑定》


効果は———-ドロップ率反転。


下手に知られたら、まともに探索できなくなるかもしれない。


俺は少し考える。


「でもさ、ギルド貢献度上げるだけなら」


指を立てる。


「低層でレアドロップ狩ればいいんじゃないか?」


凛が一瞬固まった。


そしてゆっくり言う。


「……神谷さん」


「ん?」


「それ、余計に不自然です」


「そうか?」


「そうです」


凛は真顔だった。


「低層でレア素材ばかり出す探索者。どう思います?」


「…怪しいな」


「怪しいです」


凛は頷く。


「悪いことしてるんじゃないか、そう疑われます」


「なるほど」


俺は頭を掻いた。


確かに、便利すぎるスキルも考えものだ。


「……意外と」


俺は呟く。


「使い道に困るスキルかもしれないな」


「そうですね」


凛は苦笑した。


少し沈黙が流れる。


ギルドの中は相変わらず賑やかだ。


探索者たちの声。装備の金属音。書類をめくる音。


俺は伸びをした。


「まあ…難しいことは後で考えるか」


凛がこちらを見る。


「いいんですか?」


「いいだろ」


俺は笑った。


「今まで」


少し言葉を選ぶ。


「荷物持ちだった俺がさ」


凛がきょとんとする。


「凛のおかげで、やっと誰かと並んで探索できるようになったんだ」


凛の表情が固まった。


「……え」


「だから」


俺は続ける。


「今は…二人での探索者ライフを満喫したい」


一瞬。


凛の顔がみるみる赤くなる。


「な、ななな……」


声が出ていない。


「どうした?」


俺が顔を覗き込もうとして、凛は慌てて顔を逸らす。


「わ、私だって!」


少し声が大きくなる。


「ずっと好きでソロやってたわけじゃないです!」


「そうなのか?」


「そうです!」


凛は立ち上がった。


まだ顔が赤い。


「…行きましょう!」


「え?」


「パーティの初探索です!」


やたら気合が入っている。


俺が苦笑したその時。


「あ、神谷さん、黒瀬さん」


受付嬢の声がした。


「登録終わりましたよ」


凛がぴたりと止まる。


「……」


ゆっくり振り返る。


受付カウンターにカードが二枚置かれていた。


探索者カード。


俺たちはそれを受け取る。


凛がカードを見て、小さく息を吐いた。


「……探索者ですね」


「だな」


俺もカードを見る。


少し不思議な気分だった。


受付嬢が言う。


「依頼はあちらの掲示板になります」


振り向くと、大きな掲示板が見えた。


無数の依頼書が貼られている。


・討伐

・素材採取

・護衛

・探索


凛が小さく笑う。


「じゃあ…最初の依頼を探しましょうか」


俺も頷いた。


「だな」


こうして、俺たちの最初のパーティ探索が始まろうとしていた。


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