表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

No.005:ログ

「ユー、ちょっと来てくれ」


 朝の作業が一段落した頃、ケンが珍しく真顔で声をかけてきた。


 軽い調子ではない。

 冗談もない。


 悠真(ユウマ)は黙って(うなず)き、後について歩く。


 向かった先は、X地区の外れにある小さな管理棟だった。

 普段は使われていない、(なか)ば倉庫のような建物。


 中に入ると、そこかしこに魔導端末が陳列されていた。

 壁際に置かれた端末は、X地区のものとは明らかに違い

 古いが、整備は行き届いている。


「触るなよ」


 ケンが先に釘を刺す。


「これは“ここのモン”じゃねぇ」


 端末の画面が点灯する。


 中央地区管理局規格の認証表示。

 悠真は、そこで初めて理解した。


 ――もう、見られている。


 画面に表示されたのは、淡々としたログ。



 [ 記録:X - EAS - 17 ]

 > 手順逸脱

 > 事前報告なし

 > 判断根拠:未記載

 > 再現性:確認不可


 魔導晄炉の停止操作。

 あの一連の行動が、そのまま抜き出されている。


 だが――。


 爆発の有無も、被害の軽減も、どこにも書かれていない。


 赤字で一行だけ、補足があった。


 > 評価不能な判断基準を確認


 ケンが言う。


「中央はな、

 “正しいか”より先に、“制御できるか”を見る」


 X地区の空気は、今日も変わらない。


 誰も点数をつけない。

 誰も、順位を決めない。


 それでも。


 管理側の視線は、確実にここまで届いている。


 評価されないということは、

 見逃されないということでもある。


 悠真は、端末から目を離した。


 胸の奥で、静かに理解する。


 ――それでも、あの時止めた判断を、

 間違いだったとは思わなかった。


 声に出さず、誓いもしない。


 ただ一つだけ、腹に落とす。


 評価されない選択は、

 見逃されない選択でもある。


 それでも進むなら、

 最初から、見られる覚悟を持つだけだ。


 それでいい。


 それが、悠真の出した答えだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ