表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

No.012:例外として生きていく

 結論は、出なかった。


 


 中央管理局は、

 X地区に対して「最終判断」を下せずにいた。


 


 安全性評価は、未達。

 再現性検証は、不能。

 統計データは、欠損。


 


 廃止するには理由が弱く、

 存続させるには前例がない。


 


 報告書は、

 何度も書き直された。


 


 言葉だけが、増えていく。


 


「例外処理、継続」


 


 最終的に残ったのは、

 その一文だけだった。


 


 処理不能。


 


 それが、X地区の公式な立ち位置になった。


 


 整理は、止まった。


 


 監査官の姿も、

 いつの間にか見えなくなった。


 


 管理局は、

 “見ない”という選択をしたのだ。


 


 世界は、何も変わらない。


 


 評価制度は続く。

 ランキングは更新される。

 多くの人間は、

 数字の中で生きていく。


 


 X地区だけが、

 そこから取り残されたままだ。


 


 ――あるいは、

 意図的に残された。


 


 日常は、戻ってきた。


 


 大きな音も、

 派手な出来事もない。


 


 修理をする者。

 食料を分け合う者。

 黙って働く者。


 


 誰も、英雄にならない。


 


 誰も、代表を名乗らない。


 


 それでも、

 地区は崩れなかった。


 


 ある夕方、

 悠真は魔導晄炉の外壁に腰を下ろしていた。


 


 稼働音は、低く安定している。


 


 ケンが、隣に来る。


 


「結局さ」


 


 軽い口調だった。


 


「何も変わらなかったな」


 


 悠真は、否定しなかった。


 


「……うん」


 


 少し間を置いて、続ける。


 


「でも、

 元に戻ったわけでもない」


 


 ケンは、空を見上げる。


 


「例外のまま、か」


 


「例外で、いい」


 


 その言葉は、

 もう迷いを含んでいなかった。


 


 かつては、

 評価されないことが不安だった。


 


 見られないことが、

 消えることのように感じていた。


 


 だが今は、違う。


 


 見られないということは、

 選ばされないということだ。


 


 測られないということは、

 切り捨てられないということだ。


 


 もちろん、

 守られているわけではない。


 


 自由は、

 何も保証してくれない。


 


 失敗すれば、

 誰も責任を取らない。


 


 助けを求めても、

 必ず応えが返るわけじゃない。


 


 それでも。


 


 悠真は、

 ここに立っている。


 


 自分で止め、

 自分で残り、

 自分で選び続けている。


 


 管理局の外側で。


 


 評価の届かない場所で。


 


 誰かにとっては、

 危険な存在。


 


 誰かにとっては、

 不要な存在。


 


 それでも、

 処理できない存在。


 


 例外として、生きていく。


 


 ケンが、ふっと笑った。


 


「なぁ、悠真」


 


「この場所、

 案外しぶといぜ」


 


 悠真も、

 小さくうなずく。


 


「俺も」


 


 それだけで、十分だった。


 


 世界は、今日も回っている。


 


 評価は、更新され続ける。


 


 だが、

 その外側で。


 


 一つの例外が、

 静かに、確かに、残り続けていた。


 


 ――ここから先は、

 評価されない物語だ。


 


 だが、

 消えない物語でもある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ