プロローグ
この日本という国には、二〇〇〇年ごろから異世界に繋がるゲートが現れたそうで、そこから日々、様々な世界の人々が現れる。
移住だったり、商売だったり、観光だったりとその目的は様々で、なかには侵略を企てる世界もあったらしいが、そこは様々な世界に繋がるという要素がメリットとなり、様々な世界から正義感溢れる人々が多数来日し、見事悪は滅びたそうな。
そんな不思議だけど魅力溢れる日本に、私はやって来た。と言っても、やって来たのは生まれて直ぐであって、私には日本での記憶しかない。
育てのメイドが言うには、私の世界、私の国では、双子の片方はドラゴンの生贄に差し出されなくてはならない、という決まりであった。
しかし、ドラゴンとしてもそれは不本意なもので、生贄なんて要らないという。しかし、これまでの文化的に、かつ過去生贄に捧げられた人達に申し訳が立たないとの理由から、そこに暮らす人々は捧げずにはいられなかった。
ならばどうしよう。そうだ、日本に送り出そう。と言うのは優しい表現でもあって、実質、追放のようなものだったらしい。
そうして私は生まれて直ぐに日本の病院に送り出され、美人なメイドに育てられたというわけだ。一応は王家の血筋ということで、かなりの好待遇であったらしいのは、育った今ではあまり実感がない。
とは言え、やはり普通の学校には通わせられなかったらしく、私が通っているのは、様々な世界から移住したり、商売をするうえで必要不可欠となってくる日本の常識を学ぶための学校。『国立ファンタジー学園』だ。その富士山の麓にあるキャンパスで、日々勉学に励んでいる。
そこは一種の都市でもあり、住居だって存在している。学園を中心でして広がった町で、環状線の電車も存在する。各駅から学園まで、何本かのシャトルバスが走っているが、大学のように自主的に学べる校風なため、朝に満員になることは殆どない。
さて、と。とりあえずの説明はこの程度でいいだろうか。そんな事情から学園に通う私なのだけど、今日は少し用事があるため、最寄り駅から三駅ほど離れた場所まで電車で移動し、そこからシャトルバスで学園へ向かう予定である。
今年で二十一歳になった私――ミクラリスの、登校風景をご覧いただきたい。
「……」
電車にユニコーンが乗っていた。なんという出落ち。
美しい白い毛並みに、立派に生える一本の角。それは吊り革の円の部分に入れられようとするが、わずかな揺れでなかなか入らない。
ユニコーンとしても、吊り革の円の中に角を収めたいらしい。親指と人差し指で円を作り、その中にもう片方の手の指を、目を瞑って入れられるか、のゲームをしているようにも見える。
角が突き出される。
揺れて弾かれ入らない。
頑張れ、と心の中で応援をする。
しかし入らない。
角の動きに合わせて、私の頭も揺れ動く。今日の気分であるポニーテールも、まさに目の前で奮闘をするユニコーンの尻尾のようになっているだろう。
よりによって今日は白い服だ。髪の毛だって、青みがかった白をしている。淡いピンクのフレアスカートは、馬の蹄のように見えているのだろうか。サンダルは蹄鉄だろうか。なんとなく他人の目が気になって、居心地が悪くなってしまったが、それでもまだ、角は吊り革に入らない。
そうこうしている間に、目的の駅に到着した。安心したような、それでいて名残り惜しい気持ちも抱えたまま、私は電車から降りる。窓越しに見たユニコーンは、未だに奮闘を見せていた。
電車が止まっているのに入れられないとか、ポンコツなのか? それとも、馬だから前方は見辛いということ?
そんな疑問に後ろ髪を引かれつつも、私も私で用事があるから立ち止まってもいられない。さぁ、この駅にしかない蕎麦屋にて、朝の一杯を楽しもうか。
――そんな日常に興味があるのなら、是非今後もご覧いただきたい。私の日々は、実にファンタジー(?)である。




