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エピソード「八」 味のしない潮風

七つの大罪、嫉妬のインウィにより、殺されてしまったラエティ。セカイは必死でラエティを抱き抱え、町へ急ぐ。


「はぁっ、はぁっ!」

俺は、走っていた。腕の中で動かないラエティを抱えて。


「っ、はぁっ!」

もう、無理だってわかってる。でも、魔法とかで助かるかもしれない。


「っ!はぁっ、はぁ!」

俺が、連れていなかきゃ。俺が、ラエティを…



熱い。全身が熱い。走ってるから?いや、違う。


体が重い。足が動かない。


鼓動が速い。


眠たい




「っあ!!」

気づけば、見慣れた部屋にいた。ここにラエティはいない。


あるのは、現代日本の物ばかり。


朝日と静寂が、俺を馴染ませていく。


「っ…俺は、最低だ…。」

それでも、涙は出てこなかった。



「では、みなさん各自グループで行動するように。以上。」

疲れ切った先生の声が、周りの騒音に負けずに響く。


「よっしゃ、行くぜ、世界!まずはジェットコースターだよな!」

瑠輝が俺の肩を掴み、ほぼ叫びに近い声で言う。


「...ん、あぁ。」

一つ遅れた返事をしてしまう。


「どうしたー?世界、いつにも増して元気ないじゃん?」

同じ班員の三玲がそう言う。


「まぁまぁ、こいつにも色々あるんだよ。だからこそ、楽しませてやるからな、世界?」

瑠輝がそう言う。余計なお世話なのに。



「いやー、思ったより早く乗れてよかったな。」

ジェットコースターの前の座席に座っている、班員の山口が瑠輝の方を見て言う。


「それでも、20分も待ったけどね。」

三玲が嫌味のように言う。


「でもラッキーな方だろ?いつもは30分以上も並ぶらしいし。」

隣の瑠輝が言う。


「ま、そうだな。ポジティブに考えた方が良いか。」

山口があくびをしながら言う。


しばらくしないうちに、ジェットコースターは動き出す。


決められたレールをたどい、決められた速度で、決められた動きで進む。


これに意味なんてあるのか?



そこからは、あっという間だった。なぜなら、ほぼ何も覚えていないから。

ずっと、心の風穴が気になっていたから。


「なぁ、世界?」

レストランに向かう最中、瑠輝は俺の方に顔を向け、言う。


「まぁ、なんだ?面白い考え方だと思うが、中二病はほどほどにな?」

っ!そうだ、これは中二病だったんだ。そういうことか!


とたんに、俺の心の風穴が、埋もれていく。


そうだよ、全部夢で、俺が中二病だからだ。気にしないのが正解なんだ。



その後の記憶は、無い。楽しかったはずなのに、覚えていなかった。



「ただいまー。」

玄関の扉を少し強く開けて、靴を脱ぐ。


「あら、世界おかえり。どうだった?遊園地は楽しめた?」

出迎えるようにママが来る。


「え?あぁ、うん。みんな、楽しそうだった。」

妙に重い体を、ソファに放り投げる。


「そう、それならよかった。じゃあ、夜ご飯できてるし、食べよっか。」




少し、寒いな。隙間風が吹いてる気がする。でも、わざわざ立ち上がるのも面倒だ。いいや、気にせず寝よう。


いや、寒い。やっぱり閉めよう。


そうだよ、閉めなくちゃ。


ん...来てしまった。こんなに来たくないと願ったのに、また潮風の部屋で目覚めてしまった。


一瞬、あの出来事は夢だと疑った。でも、床にある折れた剣を見れば、すぐに否定された。



「...伝えなきゃ、ラエティに。」

俺は体を起こし、マレの町の村長の家に向かった。



俺が、扉をノックする。


「...入っていいぞ。」

俺は心の風穴を掘っていく。


「ラエティは...私の本当の娘みたいだった。」

ちょっとだけ、寒い。


「みんなに優しくて、素直で明るい子だった。」

ちょっと、寒い。


「だからこそ、心配していたんだ。疲れてないか、とね。」

少し、寒い。


「でも、君が現れてからは、心配しなくなったよ。勘によるものだけどね。」

結構、寒い。


「...君を責めている訳ではないんだ、セカイくん。ただ...もう一度、ラエティと話してくれないか?」

とても、寒い。


目の前のベッドに、横たわるラエティがいる。昨日と変わらない姿で。


俺はベッドの傍にしゃがみこみ、ラエティの手を握る。もう、寒くない。


「...ラエティ、守ってあげられなくてごめん。」

本心かはわからないが、頭に浮かぶ言葉を口にする。


「でも、決めた。俺はこのまま、逃げたくない。目を反らしたくない。」

ラエティの手を強く握る。


「俺が、七つの大罪を滅ぼす。それしかできないから。」

その時、ラエティの手の甲に水滴が落ちる。


それは、俺が流した唯一の、一滴の涙だった。

連続投稿、3 CONBO!

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