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エピソード「七」 海岸の町、マレ(6)

綺麗な星空の下、二人は言葉を交わさずとも幸せだった...


綺麗。その一言だけで言い表せないが、いざ言葉に出そうとすると声がでない。


きっと、複雑な何かが絡まって、重なって、積み重なってできている空だからだろうか。


そんな幻想感に浸れるほど、綺麗だった。



「私、こんなにキレイに星空を見れたの、初めてかも。これまでも星空は見てきたけど...きっと、セカイくんのおかげだよ。」ラエティは、空を抱こうと腕を伸ばす。その姿もまた、綺麗だった。


「いや、俺は空を操る事なんてできないよ。でも...きっと、何か意味があるのなら。俺は、ラエティと一緒に星空を見れて、良かった。」俺は、変な事を口走る。あぁ、中二病全開中...


「難しい言葉を使うんだね?私、全然わからないや。でも、私もセカイくんと一緒に星空を見れて良かった。」やっと、ラエティは俺の目を見る。まるで星光のような、美しい、でも強い金色だった。


その後、俺達は再び闇を見上げる。まるで花のように、星たちが七色に輝いている。ずっと変わらない景色だ。



その時。ひとつ、またひとつと星の光が不自然に消えていく。


「あれ、光が...?」

ラエティは、玩具を没収された子供のような声を出す。


光が消えた後、風が弱まり、消える。


風が消えた後、木々の揺れる音が消え、ついに無になる。



そして、闇が沸き上がってくる。闇は水位を増していき、しばらくしないうちに二人は闇に包まれる。

苦しい。そう思った時。


目の前で闇色の水がまとまり、1つの塊となる。そして、弾丸のようになり、ラエティの方に放たれる。


「...あ゛ぅっ!!」可憐だったラエティの声は、溺れる者の声に変わる。そして、ラエティは吐血する。



『何が起きている?』



そう考える暇もなく、ラエティはその場に倒れる。背後には、闇が立っていた。


「あぁ...妬ましい...。どうしてあなたは幸せなの?どうして私は不幸なの?」闇は姿を形作り、人の形になっていく。


「でもね、今は違う。私は幸せ。久しぶりに幸せだわ。やっと、小娘を殺せたもの。私がどれだけこの機会を待ち望んでいたことか...」


その時、俺の視界は鮮明になる。星空が、腹に穴の空いたラエティを映し出す。とたんに、俺の鼓動が速くなる。


「...ッ!ぁ...!」視界がぼやける。体が重い。理解したくなくても、もう遅かった。


「ふふふっ、良いわね!ほら、傍にいてあげなさい?」闇がそう俺に諭す。


俺は、ラエティの元に走り、抱き上げる。一目で見て分かるほど、ラエティはもう助からない。


「...セカイ、くん、ありがと...。」遺言のような言葉を告げるラエティ。ただ、俺は信じなかった。


「...ッ、ラエティ?なぁ、ラエティ?」ラエティは微笑み、闇になる。



ラエティが、死んだ。どうして?なぜ、今?なぜ、ラエティ?



殺したのは、誰だ...!


俺は、人の形の闇を直視する。それは、一見人間だった。でも、見てるだけで体が潰れそうだった。


「お前は...誰だ...!」


「...まぁ、名乗ってあげる。良いものを見させてもらったからね。」まるで星屑を見るような目で、俺を見る。


「私は、七つの大罪、『嫉妬』のインウィ。」


七つの大罪?なぜ、ここに?もしかして、ラグニスが言ってた?


「その小娘はね、私のオモチャを壊したの。8年くらい前かしら?ずっと探してたんだけれど...」

インウィは、俺に背を向けて少し距離を取る。


「ついに見つけられたの。罪人は、殺されなくちゃいけないでしょう?」

インウィは振り向き、腰まで伸びた艶のない深海色の髪を揺らす。


「...ッ!!!」俺は、背中の剣の柄を握りつぶすように掴み、そのまま斬りかかる。


インウィは軽く避ける。俺はまた斬りかかる。また避ける。また斬りかかる。また避ける。


「あら...最後のあがきがこれ?やけどよりショボいわね。」インウィは、俺に指先を向ける。


何か嫌な予感がし、俺は体を左に動かす。次の瞬間、俺の剣の刀身が輝いて散る。


「ウォーターバレット。高密度の水魔力を高振動させて放つ攻撃魔法。避けられたのは誉めてあげるわ。でも、復讐は諦めなさい。次は殺してしまいそうだから...」インウィの体が闇に消えていく。


「ッ、待て!!」俺は、折れた剣を投げる。だが、それも空を舞って地面に落ちた。


何事もなかったかのように、星空が輝き始める。音が鳴り始め、風も吹き始める。だが、それ以上は何も感じられなかった。



俺はすぐさま、ラエティに駆け寄った。息をしていない。鼓動も感じられない。暖かかった雰囲気は、まるで元に戻ったかのように消え失せていた。


「...俺は、ラエティと一緒に星空を見るっていう約束すら、守ってあげられなかったのか?」先程まで心にあった復讐の熱だけでなく、すべてがなくなったような気がする。


「俺が、弱いから?俺が、すぐに動けなかったから?」泣きたいのに、涙が出ない。ただ、血のついた俺の手はより力強くラエティを抱き締める。


「あの時、すぐに動いていれば、変わってたのか?」やっと、心が満たされていく。でも、泣けない。


「俺は...何をするのが正解だ?」もう答えがある問いを、無に投げ掛ける。




「...怒れ、復讐だ。」


連続投稿だぜ!あと、やっと本編始まります。

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