エピソード「三」 海岸の町、マレ(2)
再び異世界へと来た世界は冒険者ギルドでギルドカードを貰い、薬草採取の依頼を受ける事にした。さっそく、依頼に向けて準備を始める…。
◯
「あっ、起きてましたか!状態はどうですか?あなた、近くの平原で倒れてたんですよ?」
俺が冒険者ギルドから宿屋に戻ると、今までは宿屋にいなかった亭主が話しかけてくる。
亭主に詳しく話を聞くと、どうやら俺がこの世界で初めて目覚める前、近くの平原で荷物を持って倒れていたらしい。その後、ギルドカードなどの身分証もなかった俺を、亭主であるラリスさんが匿ってくれたそうだ。
「あと、私のお節介ですから、宿泊料金は取りませんので、気にしないでください。」
「あぁ…ありがとうございます。」
その後、俺は部屋に戻り、元々持っていた自分の荷物を確認する事にした。剣、傷薬、金貨、着替えに地図。冒険者みたいな持ち物だが、ギルドカードを持ってないのは不自然だな…。
とりあえず、薬草採取の依頼の為に、平原に向かうか…。
◯
辺り一面に広がる、緑の草。気持ちの良い風が吹き、太陽の陽が暖かい。
俺はその場にしゃがみ、依頼の薬草であるレトラ薬草を探す。
「…これか?いや、違うな…これか?」
俺は、早速困難に直撃した。
薬草の見た目も、探し方も知らないのだ。そりゃあ、薬草なんて探したことないから当たり前だけど。
「レトラ薬草を探してるんだよね?これだよ。」
小さな手が、俺のすぐそばにある薬草を採る。俺は、その手の主を見る。
「私はラエティ!君は?」
腰まで伸びた金色の髪、穏やかで優しい緑色の瞳を持つ少女だった。ラエティは、俺に微笑みかける。
「俺は、世界。巴世界だ。」
「セカイくんね!薬草の探し方、私が教えてあげようか?」
ラエティは薬草を指差し、俺に説明しながら採取する。
「レトラ薬草は、基本的に傷とか怪我の回復で使えるんだよ。葉っぱが空気中の魔力を吸って、回復効果のある液を生み出してるんだって。」
「すごい物知りだな。よく薬草をこうやって採取してるのか?」
「うん、まぁね。でも、普段はマレの街のみんなの為にお手伝いしてるんだ。」
俺と同い年くらいなのに、偉い子だ…。俺だったら、『無意味』だと諦めて、動く気にもなれないのに。
◯
そうして、ラエティが薬草採取を手伝ってくれたお陰で、すぐに依頼を完了できた。
「こちらが、報酬のククス金貨です。」
名前にククスが入っているという事は、国ごとで貨幣が違うかもしれないな…など考えながら、金貨を財布に入れる。
まだ時間は残っているし、新しく依頼を受けようとした。
しかし、体が段々と重くなり、心臓の鼓動が速くなる。眠ってしまいそうだ。俺は、強烈な眠気と疲労感に襲われた。
「なんだ、この感覚…。とりあえず、宿屋に戻るか…。」
宿屋に戻るなり、俺はベッドに横になる。抵抗する気にもなれず、俺は寝てしまった。
◯
そして、すぐに目が覚める。何度も見た、日本の自分の部屋だ。どうやら、異世界で活動できる時間には限りがあるみたいだ。
俺はベッドから起き上がり、学校に向かう準備を始めた。




