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エピソード「一」 戻る中での後悔。

『ピピピピピピピ!!』

…うるせぇ、まだ寝てたいのに…!

…はぁ。


慣れたようにスマホのアラーム音を止め、薄っぺらい布団から体を起こす。


かつては希望に溢れていたこの小さな部屋も、今となっては慣れたものだ。

こんな狭い部屋なんてさ…。


…んなこと言ってもしょうがない。金ないし。


『ガタンゴトン!ガタンゴトン!』『マジ眠い…。』『うわ、この事件マジ?』『いらっしゃいませー!何名様でしょうか?』『寝みー。昨日オールしたんだよな。』『私?大丈夫、気にしないで!』『抱歉,我不懂日语...。』『あいつなんなんだよ!新入りのくせに生意気な態度で…。』『Tamen, iterum experiri potes.』『もしもし、今ちょうど着いたよ。』『ガタンゴトン!ガタンゴトン!』『なぁ、これ見ろよ!』『いやー、昨日酒飲みすぎた…。』『はぁ、仕事めんど。私、どこで間違えたんだか…。』『課題?あ、やんの忘れてた…。』『하? 왜 내가 말하는지 모르겠습니까?』『あぁー、仕事辞めてぇ!朝酒最高ぅ!』『アル中いんだけど…。』『ガタンゴトン!ガタンゴトン!』


都会特有の騒音を、朝から聞けるなんて、光栄だな。


そうポジティブ(?)に思いながら、すぐそこにあるカーテンと窓を開く。




…やっぱり閉じる。都会の匂いには、やっぱり慣れないものだ。人、食べ物、香水、薬品とか、嗅いでいるだけで寿命が縮む。




確か、あの頃だ。変わったのは。

…俺は、ここにいるべきだったのか?



『ガチャッ』

「ただいまー。」

ふぃー、今日もやっと学校が終わった。


「世界?そろそろ勉強しないの?確かに、世界は頭良いけど…高校受験の真っ最中でしょ?」


「はいはい、この後するから。マ…お母さん。」


_俺の名前は巴世界。「(ともえ)」が名字で、「世界(せかい)」が名前だ。15歳の中学生男子である。


俺は、棚からサワークリームオニオン味のポテチを取り出す。最近ハマってるんだよな。


「そう言ってさ…いつも勉強してないじゃん。」


「それでも東京都では1位だし、模試も合格判定だったじゃん。俺は、ガリ勉しないほうが向いてるんだよ。」


そう言い、ポテチを三枚重ねて食べる。あぁ、幸せだ。そう、勉強とかどうでもいいから、ポテチだけを食べていたい…と、最近は思う。


「もう…そういえば、最近川沿いで不審者の目撃情報があったらしいから、気をつけてね。」


「俺、そもそも外出しないし関係ないでしょ。家でゲームしてるだけで幸せだし。」 


不審者?今まで生きてきて、一回も見たことないけど。ま、別にいいや。さてと、今日はどのゲームのストーリー進めよっかな…。



とはママに言ったものの、最近、俺はバリバリ外出している。それも、毎日。夜中に街をふらつくのが新鮮で。


軽やかにベッドから起き、月明かりが差し込む部屋を静かに出る。なぜかギシギシ鳴る階段も、既に攻略方法を知っている。

…そうして、家を出た。


「…今日は満月か。写真撮りたいな…。」


スマホを取り出し、何枚か写真を撮る。


夏が過ぎたし、夜なのにも関わらず、ジンワリと汗をかいてきた。でも、夜風が吹いてむしろ心地良い。


「…おっ?」


俺はすぐに物陰に隠れ、見つけたものを再度見る。


人だ。


あれが、ママの言ってた不審者か?でも、ちっちゃい女の子みたいだけど…。


しばらくしたら、女の子はどこかに行った。俺が女の子がいた場所に行ってみると、何やら短剣があった。


俺は、短剣を持ってみる。意外とずっしりしてて…かっこいい!もしかして、何か意図が?例えば、俺が勇者だったりして、この短剣が鍵だったりとか!



はぁ、また厨二病が出てしまった。最近の悩みなんだよな、コレ。


その後、俺は短剣を元の場所に置いて、足早に家に帰った。面倒事は嫌だし。



「ん…朝か…。」


俺はそう呟き、ベッドから起きる。そして、大きな窓を開けて爽やかな潮風を体に受ける。

潮の匂い、カモメの声、風の感触が心地良い…。





は?波の音?



カモメの声?



風の音?





俺、今どこにいるんだ!?


てか、自分の身体も違う!?



俺は壁にかかった鏡を見る。


艶のある白銀の髪に、澄んだ水色の瞳。キレイな肌に、筋肉のついた腕…。

「イケメン」という言葉がピッタリな美少年だった。



とりあえず、一旦状況を整理する事にした。

起きたら別人で、知らない場所。一回も見たことないし、懐かしくもない。


…夢か!


なるほど、これはリアルな夢なのか。うんうん、そうに違いない。


俺は早速、ベッドのそばにあった服に着替えて、部屋の外に出てみた。どうやらここは宿屋みたいで、階段を降りた下の階には、酒場になっているみたいだった。


まだ朝早いからだろうか、人は少なかった。どうやら、ここは港町のようで、日本語ではない言語を使っているらしい。でも、不思議と読めた。


「といっても、やることもないんだけどな。」


俺は、海沿いの石畳の道を歩く。

カモメ達が鳴き、朝日が気持ち良い。

こんなリアルな夢を見れるなんて、なんだか、得をした気分だ。


…ん、なんだ?


風が止まり、カモメたちの声も、潮の匂いもしなくなった。確かに、海にいるはずなのに。

ただ、背後に「何か」の気配を感じる。


強大で…でも優しくて…でも怖くて…。


何がなんだか、よく分からない気持ちで、俺は振り返る。たぶん、興味本位だったと思う。


「なんだ、何が起こって……ゴフッ…!!」


俺の口から、一気に血が噴き出す。


後ろには、まるでライオンのような感情がない瞳を持つ女性がいた。

その女性は剣を持っていて、俺の腹に突き刺している。


『俺に突き刺している。』


なんだコレ、最悪な夢じゃねーか………。


「すまないな、ボウヤよ。安らかに眠れ。」



俺の意識は、遠ざかっていった。

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