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冗長な僕と淡白な君  作者: アストロコーラ
高校三年

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72/74

僕の軌跡

あと2話で終わります。

 r7 02/24

 バレンタインプレゼントに白石さんから日記帳をもらった。

 五年分も書けるらしく、一日五行程のスペースがある。

 あまりこういうことが続いた試しはないが、毎日書いていこうと思う。

 僕があげたブックカバーも使ってもらえたら嬉しいなぁ。

 あ、ホワイトデーのことも考えなきゃ


 r7 03/15

 最近、白石さんが朝早くから僕の家に来ることが増えた気がする。

 合鍵に慣れてきたのだろうか、僕が起きるともう家に居る。

 まぁ、別に不満や文句があるわけではないけれど、そんなに頻繁に来て楽しいのだろうか?

 それに、たまに目が覚めるとベッドの近くに立っている時がある。

 僕の首がやたら暖かい時もある。何か、僕で遊んでいないだろうか?


 r7 04/18

 進路について、多くの人に相談した。

 当たり前の話だが、やはり皆夢なり目標ってあるんだなぁ。

 僕はどうしようかな。チャランポランに生きてきたツケがここにきて出てきたな。

 とりあえず、明日白石さんにも聞いてみよう。

 白石さんと話せば、自分の気持ちにも決心がつく気がする。


 r7 05/20

 勉強勉強勉強勉強勉強勉強、これがあと十か月以上続くのかぁ。

 白石さんと同じ大学に行くと決めたのは僕だが、少しだけ気が滅入る。

 幸い、偏差値がぶっちぎりで高いわけではない大学と言うのが救いだ。

 先生にも相談してみようかな。進学実績があるわけだし、何かしらの話は聞けるだろう。

 白石さんと同じ大学に行きたいと決めたのだ。できることは何でも頑張ろう。


 r7 06/23

 本格的な梅雨が始まって、晴れの日よりも雨の日が多くなってきた。

 白石さんが、湿気で髪がまとまらないとぼやいていた。

 大変だねと気持ちに寄り添った回答をしたはずなのに、僕の頭がぐしゃぐしゃと乱暴にかき回された。

 彼女は僕の髪が嫌いなのだろうか? 定期的に、鋭い視線が僕の髪に送られている。

 割とサラサラでキレイだと思うんだけどな。もっと手入れとか真面目にやった方がいいだろうか?


 r7 07/08

 指定校推薦の話を先生に聞きに行ったら、死んだ顔をした先生がいた。

 なんでも、進路が決まってない生徒がそこそこいるのだとか。

 まぁ、やりたいことも行きたい学校もない人もいるよな、僕もそっち側の人間だし。

 女バレの顧問も持ってるらしいし、大会と担任業で忙しいのだろう。お疲れ様だ。

 とりあえず、山積みのエナドリは公務員として片づけた方がいいと思いました。


 r7 08/10

 急に白石さんが押しかけて来たと思ったら、急に同棲が始まった。

 どうしてそんな重大な事が、僕抜きで決定しているのだろう。

 仕返しにと人生で初めてのキスをしてみたが、見事に返り討ちにあった。

 男の怖さを思い知らせようと思ったのに、手玉に取られるだけであった。

 白石さんもファーストキスって言ってたけど、本当なのだろうか? 女って、怖いなぁ。


 r7 09/10

 人間、どんな場所でも適応できるものだ。初めての同棲生活は何の問題も無く進んでいる。

 むしろ、生活水準は上がったかもしれない。適当にしていた家事を白石さんが率先してやってくれるから助かっている。

 同じベッドで寝ることも慣れた。白石さんがすぐに寝付くもんだから、僕もつられてすぐに寝てしまう。

 もっと拒否反応が出ると思っていたが、そんなことはなくストレスフリーに生活できている。

 相手が白石さんだからなのかな? まぁ、悪くない生活だ。


 r7 10/20

 二人してS大の指定校推薦が貰えたので、息抜きで旅行に出かけた。

 旅先では色々あったけれど、まぁ良いも悪いも含めての思い出だろう。

 それよりも、家に帰ってきたときに、白石さんが自然に口にした『ただいま』という声が耳に残っている。

 おかえりとただいま、最後に言ったのはもう思い出せない昔の日になってしまったけれど。

 悪くない、いや、良い気分だ。もっと白石さんに言いたいし、白石さんからも聞きたい。


 r7 11/11

 段ボール二箱分もあったリンゴがいつの間にか消えていた。

 おかしいな、ジャムにしなきゃ消費できないかなぁとか考えていたのに、気が付いた時にはもうない。

 お菓子作りにもそこそこ使ったが、こんな早いペースで消える程使ってはいない。

 白石さんは素知らぬ顔で『村瀬君が食べた分を覚えていないだけでしょ』なんて言っている。

 無理があると思ったが、彼女の白い指が僕の首にかかったので何も言えなかった。そっかぁ、僕が食べたのかぁ。


 r7 12/15

 指定校推薦の結果が出た。二人とも合格だったので、一安心といったところだ。

 日中は色々と考えることがあったが、今は彼氏らしいさとは何かで頭が一杯だ。

 手をつないで、好きって言うだけじゃダメなの? 割と真剣に思いを伝えたんだけどなぁ。

 エレベーターで僕がされたみたいに、過激なことをしなきゃいけないのだろうか?

 うーん、僕は白石さんに何をされてもイヤじゃないけど、白石さんはどうなんだろうなぁ。


 r8 01/03

 三が日、特にそれらしいこともせず家でだらだらとしていた。出不精だなぁ。

 それよりも、白石さんのボディタッチが増えてきたのが気になる。

 いつの間にか、寝る時も向かい合う形になったし、少し僕の心には刺激が強くなってきた。

 どうやら、遅めの思春期が来たのかもしれない。最低でも、大学に入るまでは一線を越えたくはないんだけれども。

 もつかなぁ、僕の理性。......二人とも合意ならいいのでは?......いや、責任を取れる年齢までは我慢しよう。


 r8 02/14

 今日で、二人とも十八歳を迎えることができた。法律上、成人としてみなされるわけだ。

 去年みたいに、プレゼント交換はしなかったけれど、バカみたいにデカいケーキを二人で作って飾りつけをした。

 食べきれるか心配だったが、まぁほとんどが白石さんの胃袋に吸い込まれて消えていった。

 どうなっているんだろうなぁとぼんやりと眺めていたら、僕の口にクリームがついていたらしくそのままキスされた。

 甘い甘い生クリームの味が、今でも口に残っているような気がする。なんか、白石さんってやってることイケメンだよな。


 ——————————


 今日分の日記を書いてからふと気がつく。

 続くかどうか心配していた日記も、今日で一年目らしい。

 あっという間の一年だったなぁ。

 ページをパラパラとめくりながら、一年間の自身の思いを振り返る。

 僕、全然成長していないような気がするなぁ。

 定期的に白石さんにカッコいい所を見せようとして、返り討ちにあっている。

 あれ、これ性別逆転したほうがしっくりくるような気がしてきた。

 勉強が出来て料理も出来るクール系イケメンの白石君と、お菓子作りが趣味で人付き合いが得意じゃない村瀬ちゃん。

 ……思ったよりしっくりくるなぁ。

 あまりにも、僕の男らしいエピソードが無さすぎる。

 唇にクリームついてるよってキスしてくるの、少女漫画に出てくる王子様でしか許されない行動だろ。

 僕も真似するか?

 ……いや、無理だなぁ。妄想上の僕も、真っ赤になって白石さんから唇を奪われていた。

 どうしたものかなぁ、別に彼氏だからと言ってリードしなくてもいいのかなぁ。

 ただなぁ、それはそれで格好がつかないしなぁ。

 カッコよくなりたいわけではない、格好をつけたいのだ。

 これが男心というやつかは知らないが、好きな相手の前ぐらい見栄を張りたい。


「前から思ってたけど、人が見てるところでよく日記が書けるわね」


 僕がうんうんと唸りながら考え事をしていると、お風呂上がりの白石さんが声をかけてきた。

 最初の頃は風呂上がりでもちゃんと服を着ていたのだが、慣れてきた今はもうシャツ一枚とパンツといったラフな格好だ。


「だって、書くタイミング無くない? これで僕が風呂から出たらもう寝るでしょ? そうなったら、今ぐらいしか書けないよ。逆に、白石さんはいつ日記書いてるの?」

「内緒。それとも、乙女の日記が見たいの?」

「見たいか見たくないかで言えば見たいでしょ。僕がどう悪く書かれているか知りたいじゃん」

「悪いのは前提なのね」


 白石さんも五年日記を書いていると言っていたが、そういばこの一年で日記を記入しているタイミングを見たことがないなぁ。

 いつ書いてるんだろ。

 まぁ、教えてくれそうな気配はないので深くは聞かないが。


「それより、早くお風呂行きなさい。冷めちゃうわよ」

「おっと、それもそうだ。日記、見ないでよ?」

「フリかしら?」

「絶対に見ないでよ?」

「もうフリじゃない」


 一昔前のお笑いの様式美をすませ、お風呂場に向かう。

 そういえば、お笑いを見ることを勧めてきたのも白石さんだったなぁ。

 日記を書いて一年、白石さんと知り合って二年。早いものだ。

 もうすぐ卒業式も控えている。

 自分が見送られる立場になるなんて、想像もしていなかったなぁ。

 湯船につかりながら今までの三年間を振り返る。

 交友のある人に、挨拶に行かなきゃなぁ。

 今までなら面倒くさいと思うだろうその行為が、イヤではない自分に成長を感じつつ、誰に何を言おうかぼんやりと考えていた。


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