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冗長な僕と淡白な君  作者: アストロコーラ
高校二年三学期

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二十四節季とか分からなくない?

 三学期が始まって一か月近く経った。

 最初のうちは、「二年の三学期は三年ゼロ学期」などと言われていた厳しい雰囲気も、今ではすっかり影をひそめている。

 受験ガチ勢の生徒は黙々と勉強しているが、それは一年生の時からだから何も変わらない。

 ただ、すこしだけ学校内が浮ついているような気がする。

 男子はソワソワしてるし、女子はコソコソと楽しそうに話している。

 何かあるんだろうか。


「何で皆こんな落ち着きがないんだろうね? イベントって何かあったっけ?」

「......それはフリかしら?」


 白石さんに話しかけると、呆れるような目が返ってくる。

 換気のために開けた窓からは、冷たさが少し和らぎ冬の終わりを予感させる。

 それでもまだ寒いから、閉めちゃおう。僕らしかいないし、いいだろう。


「二月のイベントに心当たりがないの?」

「建国記念日」

「ただの祝日じゃない、もう少し学生らしいことよ」

「......あぁ、バレンタインデーか。イベントごとに疎いから、すぐに思い出せないんだよな」


 そういえば最近、スーパーやらコンビニにピンク色の装飾が多かったのはバレンタインのせいか。

 それなら、校内が浮ついてるのも納得ができる。

 チョコを貰えるかどうか、チョコをあげるかどうか、青春の一ページだろう。

 フリって言われたのは、僕がチョコをねだっているように聞こえたのかな。


「僕、祝い事に縁遠い人生だったから、本当にイベントが分からないんだよね。やっぱり実際の体験がないと記憶にならないよ」

「一般常識の範囲は覚えておいた方がいいんじゃない?」

「一般常識の範囲って難しくない? そういえば節分も忘れてたな」


 節分、彼岸、土用の丑の日、冷静に考えると行事って多いな。

 それに加えて個人ごとの記念日とかあるんでしょ?

 生きるのって大変だなぁ。


「あ、そういえば僕白石さんの誕生日知らないや。いつなの?」

「個人情報をそんなに知りたいの?」

「住所も知って鍵も交換してる仲なのに誕生日はダメなの?」

「改まって言うの、恥ずかしいじゃない」

「白石さんにもそういう感情あるんだね、もっと表に出した方が可愛げがあるよ」

「イヤよめんどくさい」


 ツンとした表情に、いつもとは違う恥じらいを感じる。

 本当に恥ずかしいと思っているらしい。

 誕生日に、恥ずかしいとかあるのかな?


「村瀬君の誕生日はいつなの?」

「えー、確か、一月十七日かな?」

「なんで自分の誕生日が曖昧なのよ」

「祝うことがないからね、平日と何ら変わらないから、日付を覚えるって文化が僕に根付いてないんだよね」

「覚えられないなら、教える意味もないわね」

「分からないよ? 白石さんがきっかけで覚えるようになるかもしれないじゃないか」


 かたくなに教えたがらない姿は新鮮で、からかいがある。

 本当に教えたくないことなら無視されるからな。

 まぁ、いつまでもからかっていても仕方がない。

 白石さんに対するとっておきの殺し文句を使おう。


「僕は教えたんだから、白石さんも教えてくれないとフェアじゃないでしょ」

「くっ」


 白石さんはフェアであることにこだわる。

 秘密の交換もそうだし、鍵の交換もそうだ。

 貸しは作らない性格のようだ。

 気高いというべきか、融通が利かないというべきか。

 悪いことではないけどね。


「...…二月十四日よ」

「おや、バレンタインと一緒の日なんだ。じゃあもう来週だね。プレゼント用意しなきゃね。甘いものでいいかい?」


 俯いてつぶやく白石さんの頬が少し赤く染まる。

 別に、誕生日がバレンタインと被ったことってそんなに恥ずかしいことかな?


「それがイヤだったのよ」

「どういうこと?」

「プレゼントをねだっているように聞こえるじゃない。このタイミングで言うの」

「......今更じゃない? 散々甘いもの作ってってねだられてるけど」

「それは勉強を教えたり本を貸したりで相殺でしょ? トレードの関係ならいいのよ」

「ふーん、生きづらそうな自分ルールだね」

「あなたにだけは言われたくないわね」

「僕はそういう、絶対に守る自分ルールとかないから」


 僕は人の好意にはお世話になる方だ。

 店長からはキッチンとか使わせてもらっているし、奥さんからレシピも貰う。

 自分からねだるようなことはしないけれど、相手がいいよというなら素直にもらう。

 白石さんのクリスマスプレゼントもそうだ。

 あ、そうだ。

 僕らしくはないけれど、良いことを思いついた。


「じゃあさ、プレゼント交換しようよ。僕は白石さんの誕生日プレゼントを選ぶから、白石さんは僕の誕生日プレゼントを選んでよ。それなら、トレードの関係でしょ」

「......まぁ、それならいいわ」

「ある程度予算を決めて、その中でセンスのあるプレゼントをした方が勝ちってことで」

「勝つと何が貰えるの?」

「んー、バレンタインだしチョコにしよう。負けた方が、勝った方に作ろう」

「分かったわ」


 折角のイベントごとだ、楽しまなければ。

 プレゼントは何にしようかな。

 僕にセンスはないけれど、考えるのはちょっと楽しいかもしれない。

 さて、何を買おうかなぁ。


「白石さんって、何貰ったら嬉しいの?」

「それを考えるのがプレゼントでしょう?」


評価、感想、誤字指摘等していただけると嬉しいです。

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