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冗長な僕と淡白な君  作者: アストロコーラ
高校二年二学期

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28/74

敬語って楽だよね

 うーん、微妙な待ち時間って困るよなぁ。

 駅前のファミレスで白石さんの保護者を待っているのだが、手持ち無沙汰である。

 面談が15分くらいだから、ここに来るまでを入れても30分かからないくらいか。

 勉強するには時間が足りないし、かといって何もしないのは退屈だ。

 これが白石さんとの待ち合わせとかなら、喜んで待てるんだけどね。

 よく知らん大人と会話するために待ってなきゃいけないのは、メンタル的にあまりよろしくない。

 とりあえず頼んだドリンクのストローを回す、カラカラと氷がグラスに当たる。

 ホットを注文するんだったな、ちょっとお腹冷えてきた。

 早く帰って、ゆっくりしたいなぁ。

 新しいお菓子のレシピでも検索してるか。

 たまには、手の込んだものでも作ってあげるか。

 食欲の秋だし、モンブランでも作ろうかなぁ。

 秋っていうほど、食欲が湧くかな?


 ————————


「やぁ、ごめん待たせたね」

「いえ、そんなに待っていないのでお気になさらず」


 適当に料理サイトを見ていると、柔和な笑顔を浮かべた保護者の方が来た。

 白石さんはいないようだ。なんで知り合いの保護者と一対一で会話しなきゃいけないんだ?

 あまり知らない人なので、アルバイトの時のように外面は良く取り繕っておく。

 笑顔で、敬語で、当たり障りなく。

 コミュニケーションなんてとりあえず明るく敬語で話してればなんとかなるからね。

 疲れるから普段はしてないけど。


「そんなにかしこまらなくていいよ、敬語も使わなくていいさ」


 敬語を使わなくていいって逆に難しいよな。

 明らかな年上に、ため口で話しかけるのは抵抗がある。


「あぁ、ため口に抵抗感があるのかな? それなら自分が楽な方でいいよ」


 エスパーかな?

 白石家の血筋は僕の考えを読むことが得意のようだ。

 それとも、僕が分かりやすすぎるのかな?

 ……なんか、良い人過ぎて逆にやりにくいな。

 我の強い人と接してきてばっかりだったから、ちゃんと僕に合わせてくれる人は珍しいかも。


「それで、お話というのは?」

「何、大したことじゃないよ。世間話さ、姪が普段学校でどんな生活を送っているか知りたいんだよ」

「白い、じゃなくて透さんの学校生活ですか」


 名前で呼ぶのしっくりこないなぁ。

 目の前の人も多分白石だろうから、混同しないようにしなきゃいけないとはいえ。

 姪ってことは、白石さんの叔父さんになるのかな?

 白石さんの学校生活ねぇ、どこまで僕が話していいんだろうか。

 クラスで孤立して陰口叩かれてますよとか言ったらどんな反応するんだろう。

 そもそも、僕はどの立場から発言すればいいんだ?

 クラスメイトとして? 彼氏役として? 死にぞこない仲間として?

 僕の立ち位置が、どういう風に伝わっているかで話す内容が変わるんだよな。


「君の話でもいいよ。何せ、初めての透のボーイフレンドだからね」

「......僕の話とか、透さんはするんですか?」

「透は全然学校の話とかしてくれないんだよ。未成年の一人暮らしだからね、心配してるんだけど、あんまり返信してくれなくて」


 まぁ、想像に難くはないな。

 白石さんとの連絡は、本当に必要最小限しかない。

 僕も雑談とかはスマホでしないから、連絡先を交換して半年経つけど、画面をスクロールしなくても全部の会話履歴が見れる。

 ん? 初めてのボーイフレンドって言った?

 役じゃなくてちゃんと彼氏として紹介されたんだ。

 変なこと言えなくなったな、付き合ってもないのに抱きつきましたとか言ったらどうなるんだろう。

 言っちゃいけないことって、どうして頭をよぎるんだろうね?


「そんな透の返信に、初めての彼氏ができたっていうからね。どんな子が相手か気になっちゃってね。三者面談のような機会でもない限り、学校生活に介入されるのを嫌がる子だから、いいタイミングで君と会えて良かったよ」

「はぁ、それはどうも」

「いやぁ、思ったよりも大人びている子で良かったよ。影響されやすい子だから、不良みたいなのに引っかかっていたらどうしようかと心配してたんだ」


 影響されやすい子? 僕の想像してる白石さんと違う人の話してないか?

 彼女が周りに流されてるようなシーンを見たことないんだけど。

 あなたの姪っ子さんは、人に責められてるときでも読書してるような子ですよ?

 

「君から見た、透はどんな子かな?」

「僕から見た透さんですか」


 うーん、反応に困る質問だ。

 もう考えるのめんどくさいから、馬鹿正直に言っちゃうか。


「愛想が死ぬほど悪いのを直したら、人気出るんじゃないですか?」

「君は、彼氏なのにずいぶん他人事のように言うね」

「他に言い方が思いつかなかったので」


 叔父さんは少し驚いた顔をして僕を見る。

 もっと彼氏っぽいこと言った方が良かったのかな?

 僕を苦しめている時の笑顔は可愛いですよとか、人前で耳たぶ噛むような人ですよとか。

 ……変な誤解を与えそうだ、却下。


「本当に愛想だけ直したら全然変わると思うんですけどね。それ以外は割と普通の性格ですし」

「そうだね。あの子は本当は普通の女の子なんだ」


 頼んだ飲み物に口をつけながら、叔父さんはほほ笑みながら喋る。

 叔父さんは、白石さんの過去とか全部知ってるのかな?

 親代わりで三者面談に出るぐらいだから、知ってるんだろうなぁ。


「君のような、理解のある人が透の彼氏で良かったよ」

「理解ありますかね? 好きな食べ物もろくに知りませんけど」

「知らないって自覚してるのが大事なんだよ。相手のことを全て理解する必要はないよ。大事なのは、知らないことを許容できることと、寄り添えることだよ。特に、透のような子にはね。村瀬君は、相手のことを全て知らないと気が済まないかい?」

「いや別に。話したくないことも、知られたくないこともあると思うんで、全てを知りたいとは思いませんね」


 僕も白石さんに全てを話してるわけではないしなぁ。

 話したい事だけ話せばいいのだ、それが僕らの関わり方だ。

 僕が一方的に話してるだけ? 喋らない白石さんが悪い。


「それなら良かった。......これからも、姪と仲良くしてくれるかな?」

「まぁ、僕で良ければ」

「そうか、安心したよ。私の連絡先も渡しておくから、何かあったら連絡しておくれ」


 そういって電話番号が書かれた紙を渡される。

 僕に安心する要素あったかな。

 これぐらいの会話だけで信頼しちゃっていいんですか?


「短い時間だったが、君なら信頼できるよ」


 おっと、やっぱり僕の心は分かりやすいようだ。

 顔にでるのかな? 今度白石さんに聞いてみるか。

 おじさんは茶目っ気のある笑顔で、右手首から肘にかけて一本の線を書く。

 あぁ、やっぱり知ってるんだ。

 僕はとりあえず、とぼけて知らないフリしとこ。


「なんのジェスチャーですか?」

「口が堅くてなによりだ。そういうところが安心できる」

「失言してばっかりですけどね......」


 今日もこの口のせいで先生の心の闇を覗くはめになった。

 もっと考えて喋らなきゃなぁ。


「時間を取らせて悪かったね。透をよろしく頼むよ」


 そう言って伝票を持って立ち去ってしまった。

 ここの会計は支払ってくれるようだ、こういうさりげない気配りを出来るようになりたいよね。

 去っていく背中を見ながら、連絡先の書かれた紙を眺める。

 はぁ、ちょっと疲れたな、ファミレスのソファに深くもたれかかる。

 あ、名前を聞くの忘れた。

 どうして、くだらないことは口にするのに、大事なことは聞いてないのかなこの口は。


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