BBQ帰りの夜道9
「日がしっかり登るまでこちらで休みなさい」
宮司にそう言われ、大人しく畳に身を横たえた。
恐怖と疲労で意識はすぐに沈み、深い眠りに落ちていった。
やがて、日が昇り、ある程度の時間が過ぎた頃。
不意に目が覚めた。
障子越しに差し込む暖かい日差しが背中を包み、昨夜まで這い上がっていた悪寒は消えていた。
護られている
そう感じることができた。
宮司がこちらに気づき、優しく声をかけてくれた。
「おはようございます。よく休めましたか?」
その声音は穏やかで、昨夜の厳しさとは違う柔らかさを帯びていた。
「昨日は……とんでもないものに憑かれてしまいましたね」
静かに告げられた言葉に、昨夜の出来事が現実であることを思い知らされる。
夢ではない。あの笑い声も、罵詈雑言も、すべて現実だった。
震える声で、俺は厄祓いをお願いした。
宮司は頷き、静かに祝詞を奏上する。
鈴の音が澄んだ響きを放ち、境内の空気が清められていく。
その音に合わせて、心の奥に残っていた恐怖が少しずつ薄れていった。
「これを持って帰りなさい」
最後に宮司からお守りを頂いた。
白地に紺の刺繍が施された小さな袋。
手に取ると、不思議な安心感が広がった。
社務所を後にし、石の鳥居をくぐる。
竹林のざわめきは穏やかで、昨夜の不気味さはもうなかった。
真夏の陽射しが眩しく、背中を温める。
ようやく、帰路につくことができた。




