BBQ帰りの夜7
あまりの異質さに恐怖で足がすくむ。
それでも必死に体を動かし、手水場へ急ぐ。
冷たい水で手と口を清めると、わずかに意識が冴える。
だが、携帯からは途切れず女の笑い声が響き続けていた。
「アハハ、アハハハハハハハ……」
その声に背中を押されるように、倒れ込むように本殿へ向かう。
境内の静けさと竹林のざわめきが重なり、異様な緊張が張り詰める。
あまりの状況に耐えきれず、本坪鈴の鈴緒を引きちぎらんばかりに振った。
ガラガラガラ
大きな音が夜の境内に鳴り響く。
その瞬間、携帯から聞こえていた女の声が苦痛に歪んだ。
「……ッ、あああああ……!」
笑い声は途切れ、代わりに罵詈雑言が吐き出される。
「裏切り者……愚か者……逃げられると思ったの……!」
慌てて二礼二拍手一礼を行い、必死に助けて欲しいと神様に願う。
震える声で「助けてください」と繰り返す。
その祈りは夜の境内に吸い込まれていった。
その時。
背後から、ジャリッ、と玉砂利を踏む音がした。
一歩、また一歩。
確かに誰かが近づいてくる。
振り返る勇気はなく、ただ背筋に冷たいものが這い上がる。
携帯からはまだ、女の声が罵詈雑言を吐き続けていた。
だが、玉砂利を踏む音はそれとは別に、確かに現実の音として響いていた。




