BBQ帰りの夜道6
「やっと繋がった……あなた、見えてたのよね」
掠れた女の声が、車のスピーカーから湿った空気をまとって響いた。
次の瞬間、笑い声が爆ぜるように広がる。
「アハハ、アハハハハハハハ……」
強烈な寒気が背中を這い上がり、ハンドルを握る手が震える。
視界の端が揺れ、危うく車体が蛇行しそうになる。
必死にハンドルを修正しながらも、心臓は早鐘を打ち、呼吸は浅く乱れていた。
「……そうだ、神社だ」
藁にもすがる思いで、家の近くの氏子の神社を思い出す。
慌てて道を変え、車体を滑り込ませるように走らせる。
タイヤが悲鳴を上げ、夜の闇を切り裂く。
だが、女の声は途切れない。
「無駄よ……無駄。あなたは、逃がさない。」
その言葉が車内を満たし、鼓膜を震わせる。
切ろうとしても携帯は反応せず、画面は真っ暗なまま。
繋がり続ける通話、止まらない笑い声。
逃げ場がない。
やがて闇の中に、綺麗な石の鳥居が浮かび上がった。
苔むした灰色の石が冷たく重く立ち、奥には竹林が広がっている。
木々が風に揺れ、さわさわと音を立てる。
静かな神社
本来なら安堵を与えるはずの場所。
しかし、鳥居をくぐっても通話は切れなかった。
女の笑い声は境内の静けさに重なり、反響するように響き続ける。
「アハハ、アハハハハハハハ……」
竹林のざわめきと女の笑い声が重なり、神聖なはずの境内が侵食されていく。
夜風が止まり、石灯籠の影が揺れる。
その揺れに合わせるように、女の笑い声は途切れることなく続いていた。




