BBQ帰りの夜道5
高速に乗り、街灯の明るさに安心感を覚える。
昼間から続いた恐怖の余韻も、洋楽とレゲエの軽快なリズムのおかげで少しずつ薄れていった。
「もう大丈夫だ、帰れる」
そう思いながら、ハンドルを叩く指先にリズムが戻っていた。
トンネルを抜け、パーキングエリアへ寄る。
エナジードリンクのせいか、我慢できずトイレへ。
冷たい水で手を洗い、鏡に映る自分の顔を見て「まだ平気だ」と言い聞かせる。
改めてお茶を自販機で買い、車へ戻る。
トラックが数台停まっていたが、人の姿は見当たらない。
それでも「人の気配がある」というだけで少し安心できた。
再び走り始める。
順調に帰れている。
家まであと少しだ
そう思うと、胸の奥に安堵が広がった。
だが、高速を降りた瞬間。
いきなり携帯が震えた。
画面には「公衆電話」の文字。
「……公衆電話?」
深夜に、公衆電話からの着信。
胸の奥に冷たいものが走る。
迷ったが、出ることにした。
車のBluetooth越しに、無言が流れる。
何もない無音が数秒続いた。
その沈黙が、逆に耳を刺す。
心臓の鼓動が早まり、ハンドルを握る手が汗で滑りそうになる。
そして…
「……あなた、見えてたわよね」
掠れた女性と思しき声が、車内に響いた。
スピーカー越しに流れるその声は、低く湿った空気をまとい、耳の奥に絡みつく。
一瞬で背筋が凍り、呼吸が止まる。
赤い服の女の姿が脳裏に蘇り、あの電話ボックスの光景が再び鮮明に浮かび上がる。
「やめろ……!」
慌てて通話を切ろうと携帯に手を伸ばす。
だが、画面は反応しない。
何度もスワイプしても、タップしても、切断のアイコンは沈黙したまま。
まるで携帯そのものが誰かに握られているかのように、操作を拒んでいた。
「……っ、なんでだよ!」
車内にはまだ、あの掠れ声の残響が漂っている。
無音と声の狭間で、時間が止まったように感じられた。
切れない通話、反応しない携帯。
その異常が、現実をさらに歪ませていく。




