夜の神社1
この話は、よくモテる優男の友人から聞いた話です。
朝から久しぶりに女友達と遊ぶ約束をしていた。駅前で待ち合わせると、彼女は少し弾んだ声で笑った。
「今日はいっぱい回ろうね、服も見たいし雑貨も見たい」
「いいね、久しぶりだし。じゃあまずは商店街から行く?」
「うん、あそこの雑貨屋さん見たいんだ」
商店街は休日らしく人通りが多く、店先からは呼び込みの声や音楽が響いていた。彼女は小物を手に取っては目を輝かせる。
「このマグカップかわいくない?」
「確かに。でも君、もう家にマグカップ何個あるの?」
「えー、でもこれは色が違うから!」
「また増えるなぁ」
服屋でも彼女がワンピースを手にして聞いてくる。
「このワンピースどう?」
「似合うと思うけど値段見た?」
「見ないで選ぶのが楽しいんだよ」
荷物が増えていくにつれて、二人とも少し疲れを感じ始める。
「歩きすぎて足が疲れたね」
「ほんと。甘いもの食べたい」
「じゃあケーキセット頼もうか」
「やった!」
近くのカフェに入り、ケーキを分け合いながら昼間の買い物の話で盛り上がった。店内の落ち着いた照明に包まれ、時間がゆっくり流れていくようだった。
夕方になり、街のレストランで夕飯を済ませることにした。料理を待つ間も会話は途切れない。
「今日は歩き回ったからお腹すいたね」
「ほんと。何食べる?」
「パスタがいいな」
「じゃあイタリアン行こう」
料理が運ばれてくると、二人は自然に笑顔になった。食事をしながらも昼間の買い物の話題は続く。 「さっきのポーチ買わなくてよかったの?」
「えー、あれはちょっと派手すぎたかな」
「でも君なら似合うと思ったけど」
「それ褒めてる?」
「もちろん」
笑い声が絶えないまま、食事を終えて店を出る。夜の街は昼間とは違う顔を見せ、街灯の下に人影が伸びていた。車に乗り込み、帰路につこうとしたところで彼女がふと口を開いた。
「ねぇ、もう少しドライブしない?」
「え、帰るんじゃなかった?」
「せっかく久しぶりに遊んだんだし、まだ帰るのもったいないよ」
「まぁ、確かに。どこ行く?」
「○○神社、行ってみたいな」
「神社?夜に?」
「うん。昼間は何度か行ったけど、夜は行ったことなくて。雰囲気違うんだろうなって」
「そういえば俺もあまり行ったことないな……じゃあ行ってみるか」
軽い調子のまま車は神社へ向かって走り出した。けれど、街の灯りが少しずつ遠ざかるにつれて、胸の奥に小さなざわめきが生まれる。夜の神社という響きに、どこか背筋が冷えるような感覚があった。




