表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/155

撮影帰りの山道

こちらのお話は、あくまで怪談です

似たシチュエーションのイベントなどがありましても関係はございません

そこのところご了承の上ご一読頂ければ幸いです

とあるイベントにカメラマンで参加した時の話だ。


午前中は古い町並みから撮影が始まった。石畳の路地に木造家屋が並び、瓦屋根の影が柔らかく落ちている。

「この路地、衣装の色が映えるね」

「背景が落ち着いてるからキャラが際立つ」

シャッターを切るたびに、衣装の鮮やかさが古い町並みに溶け込み、まるで時代を超えた舞台のようだった。観光客が通り過ぎるたびに視線を集めるが、笑い声が混じって和やかな雰囲気が続いた。

「次は角を曲がったところで撮ろうか」

「了解です!」

カメラマン同士も声を掛け合いながら、互いに構図を工夫していた。

昼過ぎには廃校になった木造校舎へ移動。入口の錆びた鉄扉を開けると、懐かしい匂いが漂う。

「黒板の前で立ってみて」

「はい!」

教室の机や廊下の長い影が、衣装の非日常感と不思議に調和する。

「この廊下、奥行きが出るね」

「ほんとだ、背景が効いてる」

体育館では、窓から差し込む光が床に広がり、衣装の裾が舞台のように映えた。

「ここ、光が綺麗だね」

「昼間は全然怖くないね」

笑い声が響き、撮影は順調そのものだった。

午後の最後は町並みの外れにある神社。石段を登ると朱塗りの鳥居が並び、昼間の光に照らされて鮮やかに映える。

「鳥居の前で撮ろうか」

「いいですね!」

衣装の色と鳥居の赤が重なり、写真は一層華やかになった。境内は静かで、木々の間から差し込む光が神秘的な雰囲気を作り出す。

「ここ、昼間は神聖な感じがするね」

「うん、むしろ落ち着く」

境内に響く笑い声とシャッター音。昼間は不安の影など一切なく、ただ撮影の楽しさだけが広がっていた。


やがて夕方。

町並みの観光客も減り、校舎の窓や神社の境内に差し込む光が赤く染まる。

「そろそろ片付けようか」

「うん、日が落ちると真っ暗になるって聞いたし」

機材をまとめ、車に積み込む。参加者たちは「今日はありがとう」「また撮ろうね」と声を掛け合いながら、それぞれ帰路につき始めた。

俺も帰ろうとしたが、片付けの最中に別のカメラマンと話し込んでしまった。

「今日の構図、あの路地のやつ良かったね」

「いやいや、体育館の光の使い方が上手かったよ」

互いに写真を見せ合いながら、撮影の工夫や機材の話で盛り上がる。

気づけば、周囲はすっかり暗くなっていた。神社の鳥居も町並みの屋根も闇に沈み、校舎の窓は黒い影のように見える。

「……やばい、もうこんな時間か」

慌てて会話を切り上げ、車に乗り込む。

カーナビを起動すると、行きと違うルートが表示されていた。

「……あれ?行きはこんな道じゃなかったはず」

少し違和感を覚えつつも、俺はそのままナビに従い、山道へと車を走らせることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ