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深夜のコンビニで 4

その日は遠方ということもあり、俺は帰路につく代わりに近くのネットカフェで一晩を過ごすことにした。受付を済ませ、薄暗い通路を抜けてブースへ入る。狭い空間に仕切り板と椅子、そしてPC。座った瞬間、ふと先ほどの写真が頭をよぎった。

「……あの影、なんだったんだろう」

気になって、少しネットで調べてみようとブラウザを開く。キーボードを叩き始めたそのとき、ブースの外から衣擦れのような音が聞こえた。人が歩いている気配。

振り返り、扉の隙間を覗く。だが、人影はなかった。通路は静まり返り、他のブースからも物音はしない。心臓が妙に早く打ち始める。

「……気のせいか」

怖さを覚えながらも、気を紛らわせようとトイレへ向かう。冷たい水で顔を洗い、少し落ち着いた気分でブースへ戻る。だが、戻った瞬間、背筋が凍った。

つけっぱなしにしていたPCの画面に、見覚えのある夜景写真が大量に並んでいたのだ。検索した覚えはない。勝手に開かれたタブに、川沿いの夜景が次々と表示されている。

その中の一枚。暗がりに、不自然に浮かぶ黒い人影があった。輪郭はぼやけているのに、そこだけ異様に濃い。まるで画面の奥からこちらを見ているように。


「……っ」


息が詰まり、思わずマウスを握りしめる。だが、恐怖に耐えきれず、PCの電源を強引に落とした。画面が暗転し、ブースは静けさに包まれる。

俺は椅子に深く身を沈め、毛布を肩に掛けた。

「……寝よう。忘れよう」

そうつぶやきながら目を閉じる。だが、眠りに落ちる直前、耳の奥で、あの衣擦れの音がもう一度、確かに響いた気がした。

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