深夜のコンビニで 1
コンビニの駐車場に数台の車が並び、蛍光灯の白い光が夜を切り裂いていた。店長に許可を取って集まった小さなオフ会。缶コーヒーやスナック菓子を片手に、談笑が続く。
「いや、この車さ、燃費が思ったより良くてさ」
「どのくらい?」
「リッター18くらい。高速だともっと伸びる」
「羨ましいな。俺のなんて街乗りで10切るからさ」
「それは排気量のせいだろ。無駄にデカいんだよ」
「でも踏み込んだときの加速感は最高なんだよな」
笑い声が広がり、車談義は止まらない。
「そういや、この前さ、旅に出たんだよ」
「お、旅の話きた」
「途中で寄った道の駅の蕎麦がめちゃくちゃ美味かった。あれは当たりだったな」
「蕎麦か…俺はこないだ食ったカレーが忘れられん。スパイス効いてて、汗だくになったけど」
「カレーって旅先で食うと妙に記憶に残るよな」
「わかる。俺も焼きラーメン食ったとき、衝撃だった」
話題は食へと移り、誰もが自分の「旅の味」を語り出す。
「そういや、温泉街行ったやついなかったっけ?」
「あ、俺だ。昼は静かで、夜になると浴衣姿の人がぞろぞろ歩いててさ、あれがまた風情あるんだよ」
「いいなぁ。写真撮った?」
「撮った撮った。川沿いの柳がライトアップされてて、雰囲気抜群だった」
「旅ってさ、結局写真残すよな。あとで見返すと、空気まで思い出す」
缶コーヒーを片手に、一人がふっと思い出したように口を開いた。
「そういや、写真で思い出したけどさ…」
「ん?」
「この前、ちょっと変わった写真が撮れたんだよ」
会話が一瞬止まる。車の話も、食の話も、旅の話も、すべてがその言葉に吸い込まれるように静まった。
「変わったって?」
「いや、普通に夜景撮ったつもりだったんだけど…後ろに人影みたいなのが写っててさ」
「え、それ誰かいたんじゃないの?」
「いや、そこ、誰もいなかったはずなんだよ」
蛍光灯の下で、缶コーヒーのプルタブを開ける音が妙に響いた。




