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夏の夜景撮影での出来事 4

「気のせいか…」そう思い直し、再びカメラへ向き直る。だが、先ほど耳に届いた鈴の音が妙に残響のように耳の奥にこびりついて離れない。液晶画面の光に集中しようとしても、意識の片隅で「チリン」という響きが繰り返し蘇る。

もう一度、シャッターを切る。

「カッシャ」。

その直後、今度ははっきりと「チリン」と小さな音が夜気を震わせた。風や虫の声とは明らかに違う、澄んだ金属の響き。展望台の静けさに不釣り合いなほど鮮明に耳へ届いた。

ふと、思い出す。展望台からさらに徒歩で少し上がった先に、小さな神社があったはずだ。昼間に訪れた時は、苔むした石段と古びた社がひっそりと佇んでいた。あの神社の拝殿には、確か鈴が吊るされていた。

その記憶と、今聞いた音が重なった瞬間、周囲の空気が妙に冷えたように感じられた。風は先ほどと変わらぬはずなのに、肌を撫でる感触が急に冷たく、湿り気を帯びている。背筋を伝う汗が、冷えた空気に触れて一層不快に感じられる。

ポケットからスマートフォンを取り出し、時間を確認する。画面には「2:07」と表示されていた。深夜の山の上、ただ一人。鈴の音が響いたのは偶然なのか、それとも…。


液晶画面の光が頼りなく揺れ、闇はさらに濃く沈んでいく。

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