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古いガラス食器 3

俺:「……食器にまつわる話って、いくつか聞いたことあるんだよな。

夜中に器を撫でるとか、妙に執着するようになるとか……そういうの」

友人:「マジで?やっぱりあるんだ、そういう話」

俺:「まぁ、断片的にな。だから余計に気になるんだよ。

その温泉街って、どこだったんだ?」

友人:「山間の、ちょっと寂れた感じの温泉街だよ。観光客も少なくて、静かなところだった」

俺:「なるほど……で、その骨董品屋はどの辺にあった?」

友人:「温泉街の通りを少し外れた路地にあったんだ。看板も古くて、気づかない人も多いと思う」

俺:「ふむ……主人はどんな人だった?」

友人:「痩せて背が高くて、白髪混じりの髪を後ろで束ねてた。

声は低いんだけど、妙に抑揚がなくてさ……売るのを躊躇ってたんだよ」

俺:「……なるほど。次の休みに、俺も行ってみるよ」

友人:「え?お前も?」

俺:「あぁ。あの温泉街ならよく行くから迷わず行けるし。ちょっと気になるしな」

友人:「そうか……なんか心強いな」

俺は心当たりがないことは言わず、少し笑って話題をずらす。

俺:「そういえばさ、その温泉街にある喫茶店、寄ったか?」

友人:「喫茶店?いや、行ってないな」

俺:「もったいないな。あそこ、コーヒーがやたら美味いんだよ。

古い街並みに似合う落ち着いた雰囲気でさ、気分転換にはちょうどいい」

友人:「へぇ、そんな店があったのか。全然気づかなかった」

俺:「路地の奥にあるからな。次行くときは寄ってみろよ。旅行の締めにぴったりだ」

友人は少し肩の力を抜いたように笑う。

居酒屋のざわめきが再び耳に戻り、冷えた空気は少しずつ溶けていく。

友人:「……ありがとな。なんか、少し楽になったわ」

俺:「いいって。せっかくの飲みだし、暗い話ばっかりじゃもったいないだろ」

二人は勘定を済ませ、店を後にする。

夜風が頬を撫でる中、俺の心には小さな違和感が残っていた。

あの温泉街はよく知っている。迷わず行ける。

だが……骨董品屋に心当たりはない…。

その不思議さを胸に抱えたまま、俺は友人には何も言わず、

次の休みに向けて静かに決意を固めていた。

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