初詣の帰り道で6
交番に近付くにつれて、
後ろから響いていた足音が、少しずつ小さくなっていった。
でも、振り返る余裕なんてない。
止まったら終わる。
その恐怖だけで、足に残っている力を全部ペダルに込めた。
交番の白い建物が目の前に迫る。
その瞬間、自転車から“飛び降りる”ように降りた。
ほとんど投げ捨てるみたいに横へ倒れたが、構っていられない。
そのまま勢いで交番に駆け込む。
中では、お巡りさんが大きな欠伸をしていた。
深夜の静けさに慣れていたのだろう。
突然の俺の乱入に、目を丸くして固まった。
「ど、どうされましたか」
息が切れて、言葉にならない。
胸が上下して、汗が滝みたいに流れてくる。
それでも必死に事情を説明した。
白い服の人影、カナヅチ、追いかけられたこと
言いながら自分でも震えているのが分かった。
もうひとりのお巡りさんが慌てて外へ飛び出していった。
しばらくして戻ってきて、首を振る。
「……誰もいませんね」
その言葉を聞いた瞬間、膝から力が抜けそうになった。
時間が時間だったため、親を呼んで帰宅することになった。
もちろん、お巡りさんにはこってり絞られた。
「こんな時間に何してるんだ」とか
「危ないから夜道は気をつけろ」とか
散々言われたが…
俺が汗だくで震えていたせいか、最後には紙コップに入った温かいお茶を出してくれた。
迎えに来た親にも、帰ってからしっかり怒られた。
でも、あの足音が消えた交番の前の明るさを思い出すと、怒られるくらいどうでもよかった。
生きて帰れたことが、ただそれだけが、その夜のすべてだった。




