初詣の帰り道で3
通い慣れた道を、シャコシャコとチェーンが乾いた音を立てながら帰っていた。
夜の空気は冷たくて、頬に当たるたびにじんわりと痛い。
街中の狭い道は、昼間とは別物みたいに静かで、自転車のタイヤがアスファルトを擦る音だけが、やけに大きく響く。
さっきまで友達と笑っていたのが嘘みたいだ。
声が消えると、世界が一気に薄くなる。
街灯の光がぽつぽつと続いているだけで、その間の闇が妙に深く感じる。
早く帰ろう。
そう思って、少しだけペダルを強めに踏んだ。
その時だった。
左側の視界の端に、“何か白いもの”がふっと引っかかった。
反射的に顔を向けるより先に、口が勝手に動いた。
「……えっ」
声が漏れた。
そこに、白い服を着た“人影”が立っていた。
いや、立っているというより、そこだけ切り取られたみたいに浮いていた。
街灯の光は弱い。
普通なら輪郭すら曖昧になるはずなのに、その白い服だけは、妙にくっきり見える。
手には、
片方にカナヅチのようなもの。
もう片方には、細長い何かを握っている。
距離は近いのに、顔だけが不自然に暗く沈んでいて、どれだけ目を凝らしても表情が分からない。
なのに、服と手に持ったものだけが、まるで別の光源で照らされているみたいに鮮明だった。
自転車はまだ動いているのに、時間だけが一瞬、止まったように感じた。
胸の奥が、ゆっくりと冷えていく。




