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初詣の帰り道で2
参拝を終えて、ふと誰かがポケットからスマホを取り出した。
「……え、もう1時間以上経ってるやん」
「マジか。やば、帰らな」
「親に怒られるわこれ」
三人で慌てて石段を降りる。
走ると砂利が跳ねて、さっきまでの静かな境内が遠ざかっていく。
参道を抜けて街灯のある道に出ると、自然とまた会話が戻ってきた。
「てか今日めっちゃ楽しかったな」
「分かる。なんか正月っぽかったわ」
「明日バイトやろ?起きれんの?」
「無理。絶対寝坊する」
「知らんぞー」
そんなくだらない話をしながら、時間を確認しては「やばいな」と笑い合う。
店の前まで戻ると、三人で軽く手を振った。
「じゃあ明日もバイトよろしくー」
「おつかれー」
「気ぃつけて帰れよ」
それぞれの帰る方向に歩き出すと、さっきまでの賑やかさがふっと途切れた。
俺は自転車に跨り、ペダルをゆっくり踏み込む。
街灯の下を通るたびに影が伸びて、また縮む。
さっきまで笑ってた声が、まだ耳の奥に残っているのに、返事をしてくれる相手はいない。
冬の夜の静けさが、急に胸の奥に落ちてきた。
楽しい時間が終わったあとの、あの独特の寂しさがじわじわ広がっていく。
ペダルを踏む音だけが、一定のリズムで続いていた。




