初詣の帰り道で1
高校時代の正月、三が日が明けて四日の夜のことだ。
その日はバイト先のクローズメンバー三人で、片付けをしながら初詣の話になった。
「今日行くんだっけ、初詣」
「行こうぜ。四日なら空いてるっしょ」
「てか寒い。早く終わらせよ」
そんなことを言いながら皿を下げ、床を拭き、ゴミをまとめる。
正月明けの店内は静かで、作業の音だけが響いていた。
シャッターを下ろして外に出ると、空気がひんやりして気持ちよかった。
「よし、行くか」
「おみくじ引こうぜ」
「甘酒飲みたい」
そんな他愛ない話をしながら、三人で神社へ向かう。
昨日まで夜店が並んでいたはずだが、今日はもうすっかり片付いていて、参道は静かだった。
「なんかさ、片付くと広く見えるよな」
「分かる。昨日めっちゃ人いたのに」
「てか暗いな。まぁ四日だしこんなもんか」
鳥居をくぐると、空気が少しひんやりした。
でもそれはただの夜の冷たさで、特に変な感じはない。
「手ぇ清めてこ」
「はいはい、順番な」
三人で手水場に向かう。
水は冷たかったけど、冬の神社らしい気持ちよさがあった。
境内には本当に誰もいなかった。
昼間の賑わいが嘘みたいに静かで、空気が澄みすぎている。
「うわ、マジで誰もおらんやん」
「貸し切りやん。やば」
「テンション上がるわこれ」
三人で笑いながら石段を上がる。
夜の神社って、なんか妙に広く感じる。
空気が冷たくて、吐く息が白くて、それすら楽しい。
「ほら、鈴鳴らすぞ」
「いけいけ」
ガラガラガラッ
澄んだ音が、境内の隅々まで響き渡った。
昼間よりもずっと響く。
音が空気を震わせるのが分かるくらい。
「おー、めっちゃ響くやん」
「誰もおらんから余計やな」
お賽銭を入れて、三人で並んで手を合わせる。
「参拝手順ってどうやっけ?」
「二礼二拍手一礼やで」
「はいはい、先生ありがとう」
声を抑えてるつもりなのに、なんかもう楽しくて仕方ない。
夜の神社って、ちょっとした秘密基地みたいだ。
「願い事ちゃんとしろよ」
「いや、俺はもう叶ったし」
「何がやねん」
「秘密や」
そんなくだらないやり取りが、静かな境内にぽつぽつと溶けていく。




