相談の末に6
「とりあえず……どんな時に、そんな声聞こえるんや?」
できるだけ声を柔らかくして聞いた。
責めるでもなく、詮索するでもなく、ただ“教えてほしい”という気持ちだけを乗せる。
一度話したからか、彼は少しオドオドしながらも答えてくれた。
「会社とかだと……女性社員が近付いてきたら……話しかけて来た時やな……」
「後は、家の中やと……寝る前とかやわ……」
「デートなんか行った時は……ヤバすぎて……吐きそうや……」
そこまで、彼はまくし立てるように矢継ぎ早に言った。
言葉を止めたら、また声が聞こえるのが怖いみたいに。
俺は黙って聞きながら、胸の奥がじわっと冷えていくのを感じた。
……これ、俺の手に負えるんか?
……いや、違う。これ、障りの強い話やないか?
その瞬間、ふっと頭の奥で宮司さんの声がよぎった。
『自分の手に負えんと思ったら、すぐに連絡しなさい。“声の話”は、長引くほど厄介になる』
助けたい気持ちと、下手に触れたら危ないという直感がぶつかり合って、
言葉が喉の奥でしばらく動かなかった。
しばらく迷って、ようやく口を開いた。
「……ちょっと、ええか?」
「……うん……」
返ってきた声は小さくて、怯えが混ざっていた。
「ちょっと電話してくるから、ここで待っててくれ。
あと、悪いけど……お前の持ってる鍵、貸しといてくれ」
彼は不思議そうな顔をした。
戸惑いながらも、ゆっくりと鍵を取り出して渡してくれた。
その手が、さっきよりも冷たかった。
俺は慌てて店の外に出た。
出入口が見える位置まで下がり、スマホを取り出す。
電話帳を開く。
遅い時間だが、出てくれると信じて電話をかけた。
コール音が続く……。
自分が焦れているのが分かるくらいには、
そのコール音が、やけに長く感じた。




