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相談の末に5
彼は、そこまで話したあと、おもむろにタバコを取り出し、一本口に運んだ。
しかし、その手は小さく震えていた。
気持ちを落ち着かせて、言いたくないことを話すかどうか、まだ迷っているようだった。
マッチを擦ろうとして、火がつかない。
指先がわずかに滑った。
それだけ動揺しているのだろう。
俺は、落ち着くのをもう一度待った。
ようやく火がつき、彼は深く吸い込んで、長く煙を吐いた。
その吐息に、覚悟とためらいが入り混じっていた。
吸い終わると、彼は意を決したようにこちらを見た。
目だけが、どこか別の場所を見ているようだった。
「……その夜中に、家へ帰ってきてな……」
しかし、決意も揺らぐのか、言葉が喉の奥で止まる。
「玄関……閉めた時や……」
喉から絞り出すような、かすれた小さな声だった。
「女の声で……『これで一緒だね』って……言われたんや……」
空気が一瞬だけ止まった。
「おい、お前、それから1ヶ月ずっとほってたんか」
あまりのことに、俺は焦って問い詰めてしまった。
彼は叱られた子供のように怯えた目でこちらを見ていた。
その目の奥に、“助けを求めたいのに言えなかった”時間の長さが滲んでいた。
「……すまん。お前なりに、なんとかしようとしてたんやな……」
彼は泣きそうな声で、「……うん……」と小さく答えた。




