相談の末に4
「そうやな。そういう類の話は好物やで。
めっちゃ集めてるし、場合によっては取材も行くぞ。」
そう言うと、彼はようやく口を開いた。
「……えっとな。ここ、1ヶ月くらい……女の声がずっと頭に入ってくるねん」
「入ってくる?」
そう聞くと、彼は指先の震えを隠すように、
両手を指先で組んで押さえ込んだ。
その仕草が、言いたくないことを無理に押し出そうとしているように見えた。
「せやねん……なんて言えばええんやろな……」
言い淀む彼を見て、俺は考えがまとまるまで静かに待った。
カラン、と氷の崩れる音が、やけに大きく響いた。
彼の視線が上や横に泳ぐ。
まとまらない答えを探しているというより、
“言いたくない記憶”を引っ張り出されているような揺れ方だった。
「……耳元で囁かれてるねん。小さい声でな」
「それが、ずっと続くねん……」
「お前、それ、どっか心霊スポットとか行ったとかじゃないんか?」
そう言うと、彼は慌てたように首を振った。
否定というより、“そこじゃない”と必死に逃げるような動きだった。
「いや……心霊スポットは行ってない……」
不思議に思って、俺はさらに聞く。
「なんか、始まった心当たりないんか?」
その問いに、彼は一瞬だけ息を止めた。
喉が上下し、視線がテーブルの端に逃げる。
「……ある」
声は小さく、押し出すような音だった。
「1ヶ月前くらいに……夜中ちょっと出た時に……変なことはあったんよ」
言ったあと、彼は唇を噛んだ。
言葉にしたくなかったものを、無理に外へ出したような顔だった。
「それ、原因なんじゃないんか?」
問いかけると、彼は答えず、ただ沈黙した。
否定も肯定もできない沈黙。
その沈黙の重さで、“あの夜の何か”が、彼にとって本当に触れたくない記憶だと分かった。




