俯瞰撮影で4
参道を降り、砂利の音が次第に遠ざかっていく。
駐車場に戻ると、山の冷たい空気がまだ身体の奥に残っているようで、深呼吸をひとつしてから車に乗り込んだ。
山道をゆっくりと下る。
ヘアピンカーブを抜けるたび、木々の影がフロントガラスを横切り、さっきまでいた静かな境内が少しずつ遠ざかっていく。
街に降りる頃には、山の空気の清らかさがほんのりと日常の温度に溶けていった。
昼ごはんの店に入り、料理を待つ間にカメラからスマホへデータを転送する。
今日の渾身の一枚
あの俯瞰写真を開くと、思わず頬が緩んだ。
光の入り方も、街並みの奥行きも、遠くの海の青も、空の淡い色も、全部がちょうどいい。
何度見ても飽きない、そんな一枚だった。
他の写真も見ようとスクロールした瞬間、指が止まった。
鳥居の端に、朝に見かけた老夫婦が映っている。
こちらを向いて、まるでレンズに気づいたように、にこやかに笑っていた。
そんなはずはない。
あの時、境内には自分しかいなかった。
誰の気配もなかったはずだ。
慌てて他の写真を確認するが、どれにも彼らの姿はない。
その一枚だけが、まるで記念写真のように、はっきりと写っていた。
彼らは一体…
そう思いながらも、写真の中の老夫婦の笑顔はどこか柔らかく、嫌な感じはまったくしない。
むしろ、「よく来たね」とでも言っているような、
そんな穏やかさがあった。
その穏やかな笑顔に、心が少し温かくなった。




