346/371
自販機で1
夜中、ふと目が覚めた。
喉がひどく乾いている。
口の中が少しだけ熱を持っていて、
息を吸うたびに、その乾きが余計に気になった。
部屋の空気は、夜なのにまだ重かった。
窓を少し開けて寝ていたはずなのに、湿気がじっとりと部屋に溜まっていて、布団の中の熱が抜けていない。
冷蔵庫を開けたが、冷たいものは何ひとつ残っていなかった。
お茶も、ジュースも、氷すらない。
冷気だけが顔に当たって、その一瞬だけ少し楽になる。
でも、炭酸の喉ごしが欲しい。
あの、最初の一口で喉の奥が“キュッ”と冷える感じ。
それだけを想像して、余計に喉が渇いた。
仕方なく、軽く上着を羽織って外に出た。
玄関を出た瞬間、
むわっとした熱気が身体にまとわりついてくる。
夜風なんてものはなく、
空気そのものが湿った布みたいに重い。
歩き出すと、背中に汗がゆっくり滲んでいくのが分かった。
動くたびに上着の内側に熱がこもって、脱ぎたいのに、脱いだら脱いだで、肌にまとわりつく夜気が嫌で、結局そのまま歩く。
家から自販機までは五分ほど。
街灯の光が湿気に滲んで、ぼんやりとした輪をつくっている。
その輪をひとつ抜けるたびに、空気の重さが少しずつ変わる気がした。
角を曲がると、自販機の白い光が、湿った夜の中でぽつんと浮かんでいた。




