通勤で視えたもの6
酒も進み、お互いの近況やどうでもいい話をひと通り話し終えた頃だった。
グラスの氷がカランと鳴り、店内のざわめきが少し遠く感じられる。
ふと、胸の奥に引っかかっていた“あの神社”のことが頭をよぎった。
今なら話せるかもしれない。
いや、むしろ今しかない。
友人なら、何かしらの答えが出るだろう。
あいつの、あの妙に鋭いところが、今回ばかりは頼りになる気がした。
「なぁ……ちょっと聞いてほしいことあるんやけど」
そう切り出そうとした瞬間、
自分でも気づかないほど小さく息を呑んでいた。
友人は気にしたふうもなく、箸で枝豆をつまみながら言った。
「どした? えらい深刻そうやん」
その軽い調子に、逆に言い出しやすくなった気がした。
俺はグラスの水滴を指でなぞりながら、最近の通勤で起きている神社での出来事を、できるだけ順を追って話した。
最初に灯りがついていた日のこと。
白い巫女服の女性を見た日のこと。
日を追うごとに、少しずつこちらへ向いてきていること。
見ないようにしても、どうしても目が向いてしまうこと。
友人は途中で口を挟むこともなく、ただ静かに、真剣に聞いてくれていた。
話し終えると、友人はしばらく黙ったままビールを一口飲んだ。
その間が妙に長く感じる。
そして、グラスを置きながら、ぽつりと言った。
「……それ、お前が魅入られてるんじゃねえの?」
その言葉が落ちた瞬間、
店内のざわめきが一瞬だけ遠のいたように感じた。
胸の奥が、じわりと冷たくなる。




