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通勤で視えたもの5

金曜日の夜、仕事は何事もなく定時に上がれた。

会社を出る時に「今から向かう」と友人に送ると、

程なくして 「俺も今から向かうわ」 と返ってきた。

駅前の居酒屋は、金曜の夜ということもあってかなり混んでいた。

予約もしていない。

先に着いた俺は、入口横のボードに“2名”と書いて待つことにした。

しばらくすると、友人が人混みをかき分けるようにしてやってきた。

「待たせたか?」

「いや、混んでるから名前書いて待ってるだけやし、気にするなよ」

そんな挨拶を交わしていると、ちょうど店員が名前を呼んだ。

タイミングよく席に案内される。

「めっちゃいいタイミングできたな」

そう言うと、友人は肩をすくめて笑った。

「俺は持ってる男やからな」

その軽い調子に、少しだけ緊張がほぐれた。

ここ数日、神社のことばかり考えていたせいで、

こういう何でもない会話が妙に安心する。

席に着くと、店内のざわめきが耳に心地よく響いた。

金曜の夜特有の、少し浮ついた空気。

グラスの音、店員の声、隣の席の笑い声。

そういうものが、ここ数日の“あの光景”を一瞬だけ遠ざけてくれる気がした。

席につくと、俺は烏龍茶、友人はビールを頼んだ。

店員が去っていくと同時に、友人がグラスを指で軽く叩きながら言う。

「相変わらずやな。やめるって決めたら一切飲まないのな?」

「もちろん。俺が決めたことやからな」

そう返すと、友人はニヤッと笑って、さらに続けた。

「タバコもあれから吸ってないんやろ?」

「もちろん」

「すげぇわ。俺ならやめれねぇよ」

友人はそう言って、ちょうど運ばれてきたビールを一口飲む。

その仕草が妙に自然で、昔から変わらんなと思う。

俺は烏龍茶のグラスを手に取りながら、

「まぁ、やめるって決めたらやめるだけやし」

と軽く返す。

友人は笑いながら、

「そういうとこ、ほんま尊敬するわ」

と言って、またビールを口に運んだ。

店内のざわめき、グラスの触れ合う音、

金曜夜の少し浮ついた空気。

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