通勤で視えたもの3
それからというもの、毎日帰りのバスに乗ると、気が付けば神社の方へ視線が吸い寄せられるようになった。
見ないようにしようと意識しても、窓に映る自分の顔が、勝手にそちらへ向いていく。
そして、必ずいる。
あの白い巫女服に赤い袴の女性が、参道の中央に立っている。
最初は本殿に向かって、まっすぐ立っているだけだった。
ただの影のように見えた日もあった。
けれど、日が経つにつれて、その“立ち方”が変わっていくのが分かった。
最初に変わったのは首だった。
ほんのわずか、気のせいと言い張れる程度の角度で、こちらへ傾いていた。
数日後には、その傾きがはっきりと分かるようになった。
暗闇の中で、白い衣がわずかにこちら側へ寄って見える。
体はまだ本殿の方を向いているのに、首だけが不自然な角度でこちらへ向いている。
そして最近は、
体そのものが、ゆっくりと、こちらへ捻られているように見える。
まるで、毎日ほんの少しずつ、時間をかけて、こちらを振り向こうとしているように。
バスが通り過ぎる一瞬の出来事なのに、
その“変化”だけは妙に鮮明に分かる。
昨日よりも、今日の方が、確実にこちらへ向いている。
その角度が、もう“気のせい”では済まないところまで来ている。
バスの窓越しに見えるその姿は、暗闇の中で浮かび上がるように白く、こちらへ向かおうとするその捻れが、どうしようもなく目に焼き付いて離れなかった。
胸の奥が、じわりと冷たくなる。
毎日、確実に近づいてくる“何か”を見ているような気がした。




