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通勤で視えたもの2

その日は特に何もなかった。

ただ、境内に灯っていたあの柔らかい明かりが、少しだけ印象に残っただけだ。

それから数日後。

残業が長引き、また同じ時間帯のバスに乗ることになった。

バスはいつものように神社の前へ差し掛かる。

あの日と同じように、窓の外をなんとなく眺めていた。

その神社は、今日は真っ暗だった。

境内の奥まで、街灯の光が届かない。

いつも通りの、静かで影の濃い神社。

……のはずだった。

鳥居の内側、参道の中央あたりに、白い巫女服に赤い袴を着た、髪の長い女性が立っていた。

暗闇の中で、そこだけが不自然なほどくっきりと浮かび上がっている。

まるでスポットライトでも当てられているかのように、輪郭がはっきりしていた。

女性は本殿の方を向いていて、こちらには背を向けている。

動く気配もない。

ただ、まっすぐに本殿の方へ向かって立っている。

その姿を見た瞬間、背筋に冷たいものがすっと走った。

理由は分からない。

ただ、

「見てはいけないものを見た」

そんな感覚だけが、妙に強く残った。

次の日、定時で帰れたので早めのバスに乗り込んだ。

とはいえ、季節はもう秋に差し掛かっていて、日が落ちるのは早い。

車内の照明が反射する窓の向こうは、すでに薄い藍色に沈み始めていた。

夕闇が迫る中、バスはいつものように神社の前へ差し掛かる。

ふと、昨日の女性の姿が頭をよぎった。

見ないようにしよう。

そう思ったのに、意識とは裏腹に、顔が自然とそちらへ向いてしまう。

……いた。

昨日と同じ場所、参道の中央あたり。

白い衣と赤い袴が、夕闇の中でぼんやりと浮かんでいる。

ただ、昨日と違うのはら首の向きだった。

体は相変わらず本殿の方を向いている。

けれど、首だけが、ほんのわずかにこちらへ傾いているように見えた。

まるで、体は本殿に向けたまま、顔だけこちらを向こうとしているようなそんな不自然な角度。

気のせいかもしれない。

そう思おうとしたが、視線が合ったような気がして、

胸の奥がじわりと冷たくなった。

バスは何事もなかったかのように通り過ぎていく。

窓の外の景色が流れていくのに、

その“わずかな首の角度”だけが、妙に頭に残った。

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