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通勤で視えたもの1

公共交通機関での通勤が半年をすぎた頃だった。

寒い時期から始めたバスと電車の通勤も、もうすっかり体に馴染んでいる。

最初の頃は毎日が新鮮で、乗り換えのタイミングや混雑具合にいちいち気を張っていたけれど、

半年も続ければ、曜日ごとの混み方や、バスの揺れ方の癖まで分かるようになってきた。

暑い時期も終わりに差し掛かった、そんな日のことだ。

その日も駅前から帰るためにバスに乗り込む。

だいたい同じ席につく。

左側の窓側だ。

帰りはほぼ終点なので、うつらうつらすることも多い。

その日は残業で少し遅い時間になった。

電車との接続が悪く、バスを三十分は待つことになったが、ようやく乗れた。

半年も通っていると、こういう“待ち時間の運の悪さ”も、もう気にならなくなってくる。

少し疲れが出たのか、眠気が強かった。

動画サイトで怪談師の語りを聴きながら、窓の外を眺める。

駅前の大通りに植えられた街路樹は、青々と茂っている。

季節が変わっていくのを、毎日の通勤の中でゆっくり見てきた木々だ。

そんな季節の変わり目になんとも言えない情緒を感じながら乗っていると、

バスはいつものように、通勤路の途中にある小さな神社の前へ差し掛かった。

半年以上この道を通ってきて、その神社が夜に明かりを灯しているところなんて、ほとんど見たことがない。

昼間でも人影はまばらで、夜になれば鳥居の向こうは真っ暗で、街灯の光がかろうじて境内の端を照らす程度だ。

それが、その日に限っては、 境内の奥の方からぼんやりとした灯りが漏れていた。

提灯のような、電球のような、どこか柔らかい光が、鳥居の内側を淡く照らしている。

「珍しいな」

そう思った瞬間だった。

バスはゆっくりと神社の前を通り過ぎていく。

窓越しに見える灯りは、普段見慣れた暗がりとはまるで違う雰囲気をまとっていた。

その光景が、妙に胸に引っかかった。

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