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史跡めぐりにて5

「うん」

軽く相槌を打つと、友人は少しだけ視線を落として続けた。

「時間はな、夕方ちょっと遅い時間やったかな。

境内には誰もおらんかったんよな」

その言い方は、情景を思い返しているというより、

“確認している”ような響きがあった。

「んで、御本尊見たいなぁ思って、奥に向かって歩き始めたねん」

「ほう」

「ホンマに誰もおらんで、静かすぎるくらいでな。

自分が歩くときの砂利踏む音だけが響く感じでよ」

その場の空気が、喫茶店のざわめきとは別の温度で立ち上がる。

友人の声が、少しずつ低くなっていく。

「でもな……御本尊のある本堂に近付いた時に、

足音と“別の音”が混じってるのが聞こえたねん」

友人はそこで言葉を切り、カップの縁を指でなぞった。

「砂利の音とは違う。

もっと……なんちゅうか……」

言い淀むその様子が、逆に“何かがあった”ことをはっきり物語っていた。

「別の音ってどんなのなん? そこ気になるわ」

そう言うと、友人は手のひらを軽く振って制した。

「待てや、ちゃんと話すからよ」

少し息を整えてから、ぽつりと続ける。

「なんや……カチャ…カチャ…っていう音が混じるねん。

風でなんか当たってんのかと思ってんけど、止まると音も止むからさ」

「それ、変わった音やな。ジャリジャリとかの音と違うんやろ?」

「せや。明らかに別の音や」

友人はそのときのことを思い出すように、眉間に皺を寄せた。

「怖い思いながら、なんとか本堂に着いたんや。

んでな、お賽銭入れて手ぇ合わせて拝んだあと……

ふと振り向いたんや」

そこで一度、言葉が止まる。

喫茶店のざわめきが、妙に遠く感じる。

「そこに……甲冑着た武将みたいな“人影”みたいなんが、こっち向いてるんが分かってよ」

友人は、コーヒーに触れもせず、

ただ両手を組んでテーブルの上に置いたまま固まっていた。

「影とか気のせいとか、そういうレベルちゃうねん。

“おる”って分かる感じやった」

声が少しだけ震えていた。

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