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史跡めぐりにて4

「実はな」

友人はコーヒーに手をつけず、指先でカップの縁を軽く叩いた。

その癖が出るときは、だいたい“本題に入る前”だ。

「こないだ隣県の山側の街に、史跡めぐりに行っとってん」

「おう、SNSで見とったで。城とか見とったやろ?」

「おう。それでな、俺、寺社仏閣巡りも好きやん」

「せやな」

「せやから、ついでにあちこち参ったろ思てな」

「参ったろって偉そうやな」

「城主の菩提寺っちゅうんが、近くにあったんや」

「ほんで?」

そこで友人は、少しだけ呼吸を置いた。

言葉を選ぶみたいに、視線をテーブルに落とす。

「そこでな……信じられんもん見たんや」

声のトーンが、さっきまでと違った。

冗談でも、話を盛るときの調子でもない。

“見た”と言い切るときの、あの独特の重さがあった。

友人はようやくコーヒーに口をつけ、

熱さを確かめるようにゆっくり置いた。

「お前にしか言えんと思ってな」

そう続けた声は、少しだけ震えていた。

「俺にしかってのは、お前の体質知ってる奴にしかってことか?」

そう尋ねると、友人は深く頷いた。

冗談を挟む余裕もなく、ただ真面目に。

「ほら、俺、ある時からやたらと変な話やら、体験するようなったやろ?」

「そうやったな」

あの頃から、友人の周りには妙な話が増えた。

本人は気にしてないようで、でも時々、説明のつかないことをぽつりと漏らすことがあった。

「そんで、こんな話、普通にしたら頭おかしなった思われるやん」

「まぁ、そうやな」

「お前なら、怪奇譚とかで馬鹿にせず話聞いてくれるやろ?」

その言い方が、少しだけ弱かった。

普段のあいつなら、もっと軽く言うはずなのに。

「まぁ、そんな話が好きやからな」

そう返すと、友人はようやく少しだけ肩の力を抜いた。

コーヒーをひと口飲んで、深く息を吐く。

「ほんなら……話すわ。

あの日、菩提寺でな……」

友人の声が、そこからほんの少しだけ低くなった。

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